研究課題/領域番号 |
25350029
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
柴山 拓郎 東京電機大学, 理工学部, 准教授 (80366385)
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研究分担者 |
高橋 達二 東京電機大学, 理工学部, 准教授 (00514514)
渋谷 智志 東京電機大学, 理工学部, 講師 (20553530)
大村 英史 東京理科大学, 理工学部, 助教 (90645277)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 電子音響音楽 / 電子音楽 / コンピュータ音楽 / 音楽生成 |
研究実績の概要 |
音楽は次に訪れる音楽的状況に対する期待感の連続と捉えることができる。その期待感の連続は、音楽聴取時に実際に聴くことができる側面の背後にある抽象化された構造と捉えることができる。その期待感の連続を音楽情動として定量的に取り扱うために、本研究では、音楽を連続する二つの事象間に生じる因果推論としてその構造を極限まで単純化して取り扱い、その因果関係を提示するためのプロトタイプモデルを生成するために、情報エントロピーの多寡によって音の経時的な発音タイミングと音程要素の組み合わせを生成可能なモデルを構築した。これらの知見に基づき3つの電子音響音楽作品を作曲した。これらの作品は、制作したモデルの、研究年度にそった段階的な作曲プロセスへの応用という位置付けである。最終年度には、作曲プロセスをモデルにゆだねた楽曲『Metrix2016』を作曲した。これらの作品は、音楽と音楽ではないものの間範疇性をもったものであるという点が共通した概念である。本システムでは、エントロピーの多寡を調整することによって、音楽的な状態から非音楽的な状態を作り出すことができる。そして、そのモデルは、経時的な音楽構造のみならず、音楽が音楽として在るべき要素の生成というより広汎な理論形成の基礎となり得ると考えられる。今後は、音楽生成モデルを構築するにあたって、モデルによって生成された結果と作曲家が作曲した結果との間にある隔たりをどのように小さくしていくかということが課題として残された。この課題は、音楽と音楽ではないものの間範疇性をどのように明示可能なのかということとも捉えることができる。その境界領域は聴き手によって可変的である可能性があり、今後は、このモデルによってその境界領域を調整することで、熟練した聴き手を満足させることができるより複雑性の高い楽曲を生成することができると考えられる。
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