研究課題/領域番号 |
25350031
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
出原 立子 金沢工業大学, 情報フロンティア学部, 教授 (00299132)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 図的表現 / 形態的特徴 / 図の分類 / 近世日本 / 視覚情報デザイン / 立体図法 / 芸術工学 / デザイン学 |
研究実績の概要 |
昨年に引き続き、本研究においてこれまでに収集してきた全国の主要な図書館・資料館、およびオンラインより公開されている公共図書館・資料館等の文献データベースにおける近世日本の図の資料を元に、形態的特徴の分類方法の検討を行った。今年度は形態的特徴を定量的に分類する方法を追求し、図の基本的な種類と図形が表すおおまかな意味との関係性を包括的に捉えることを試みた。これまでに収集した資料のうち170件の図のデータについて、図の基本的な種類と図形が表す関係性の意味の洗い出しを行い、統計的な手法による分析を試みた。その結果、図的表現を形態的特徴から大別するための指標を得ることができた。この成果を元にWeb上で図を分類閲覧するためのプラットフォームとなるサイトの基本設計を立てた。 さらに、収集した図の形態的特徴の分類の結果、空間的な配置関係を主とした図の中に、立体構造を平面図で表したと考えらえる図があることに着目し、それらの立体図法について分析を行った。その結果、西洋で作られ現代においても一般的に活用されている透視投影図法のような、見たままの形を表現する方法とは異なる立体図法があると考えられた。立体構造を平面図に表すためには、どの立体図法を用いても必ずどこか情報の歪みが生じる。そこで、仮説として考えられた立体図法と透視投影や軸測投象との比較を行い、各図法の利点欠点を整理した。この近世日本における図的表現を立体表現の分析は、当時の図法に関する新たな知見を得ると考えられ、今後さらにこの観点からの追求を進める必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初想定していたオンラインからの図的表現に関する公開データの収集方法の検討が難航しているため、予定よりもやや遅れている状況にある。すなわち、各図書館、資料館等によって公開データの形式に違いがあり、統一的に処理する方法を定めることが難しいことによる。従って、本研究では将来的に近世日本に関連する資料のオープンデータ化が進み、且つ、統一的なAPIなどで検索が可能になることを想定して、その際、図をどのような視点で分類閲覧できるプラットフォームがあるべきかを追求することにし、図的表現を形態的特徴から大別するための指標を得ることができた。この成果を元に今後Web上で図を分類閲覧するためのプラットフォームとなるサイトの基本設計を立てた。 さらに、図の形態的特徴を分析する過程において、立体構造を表していると考えられる特徴的な図に着目し、近世日本における立体図法についても分析を行った。
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今後の研究の推進方策 |
図の形態的特徴分析における立体図法の解明について、今後さらに深めて追求していきたい。この事は、近世日本の図を考える上で新たな発見が期待できる。 本研究で取り上げてきた近世日本の図的表現は、これまであまり知られずにいたものが多い。従って、本研究をより発展させるためには、近世日本の図についての情報をより一般社会に向け発信する必要がある。そのために、今後、研究成果を国内外の学術学会で発表し、さらに、研究成果を含む近世日本の図の展覧会を一般向けに企画し実施し、広く紹介することも行っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた文献調査の旅費が想定していたよりも節約でき、調査資料の整理やデータベース制作作業等を申請者自身が行ったことにより謝金を節約できた。また、研究成果のまとめに時間を要しており、若干の時間が必要である。さらに、図の形態的特徴を分析する過程において、立体構造を表していると考えられる特徴的な図に着目し、近世日本における立体図法の分析に関して研究を展開したことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
図の形態的特徴を分析において立体構造を表す立体図法に関して研究を展開し、最終的な研究のまとめを行ないたい。これまでの研究成果を国内外の学術学会で発表したい。さらに、本研究をより発展させるためには近世日本の図についての情報をより一般社会に向け発信する必要があり、今後、本研究成果を含む近世日本の図の展覧会を企画し実施したい。
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