本研究は、近世日本において活用された図の形態的特徴に基づいた特性抽出方法を構築することを目的とし、その方法を用いて様々な図のデータを体系的に捉えるためのプラットフォームの設計を目指した。 まず主要な公共図書館・資料館に所蔵されている近世日本の文献、および、オンラインを通じて公開されている文献データベースや画像データベースについて、図のデータの検索・収集環境の現状について調査した。その結果、各施設による公開データ形式の違い、文献データベースにおけるデータ構成の違い、および検索エンジンを用いた検索における図に関するデータの不十分さなど、複数の図書館を統一横断的に図のデータを検索する方法構築が難しい状況や、図書館における図的表現の情報に関する根本的な問題も浮き彫りになった。 続いて、多様な図のデータを体系的にとらえるための図形の特性抽出方法として、図を基本的な形態的特徴で分類し、図形が表す大まかな意味との関係を包括的にとらえるために統計的手法を用いて分析を行った。その結果、線的関係性(線で繋がる対象同士の関係性)と空間的関係性(空間的な大きさや配置)を大きな評価軸として分類することができた。さらに、これを設計指針として図を体系的に捉えるためのプラットフォームの基本設計を立てた。 さらに、近世日本の図の形態的特徴を追求するために立体構造を表した図に着目し、それらの立体図法について調査した。その結果、近世日本の図には西洋でつくられた透視投影図法などとは異なる、独自性の高い立体図法を用いている例があり、それぞれの特徴を比較した。 最後に、本研究により明らかになった近世日本の図の特徴を一般社会に向け発信するために、研究成果を含む近世日本の図の展覧会の実施のための具体的な制作を行った。
|