研究課題/領域番号 |
25350033
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 同志社女子大学 |
研究代表者 |
有賀 妙子 同志社女子大学, 学芸学部, 教授 (70351286)
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研究分担者 |
真下 武久 成安造形大学, 芸術学部, 講師 (10513682)
森 公一 同志社女子大学, 学芸学部, 教授 (60210118)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | デザイン教育 / メディア表現 / インタラクション / 携帯型端末 |
研究概要 |
当該年度の計画は, (1)新しいメディア・領域を対象としたデザイン基礎教育の事例調査,(2)メディアデザイン・アートの事例調査,(3)技術面での調査と基本プログラムの開発の3点であった。 (1)と(2)に関係して,米国で調査を行った。グッゲンハイム美術館およびロスアンゼルス現代美術館でのジェームス・タレルの企画展を通し,光を体験するタレルの作品を読み直すことで、身体性と光の関係を理解し,人の行為が発見する光の肌理、それから受け取る感覚を考察した。また,スタンフォード大学d.schoolにおける教育実践の場を見学するとともに、design innovation projectを担当する教員の一人と,教育実践手法や評価方法について、意見交換を行った。 加えて (2)に関係し,コンピュータを利用した新しい表現の可能性を追求するメディア・アーティストであるジャン=ルイ・ボワシエ氏に講演を依頼し,議論を行った。インタラクティブの形式の探求に根差す氏の作品の振り返りを通して,感覚とインタラクションの関係性について考察した。 上記の調査を踏まえ,教育プログラムの構築のため,16回の会合を持ち,議論を重ねた。身体とメディアとの相互作用が生みだす感覚を探求するという当初の目的であったが,個人の感覚から離れ,他者性,社会の問題に気づき,自己の変容を促すような教育プログラムを目指すべきであると,教育目的を深く設定し直した。スタンフォード大学d.schoolはイノベーションを育む力を養成する枠組みを作っているが,本研究では新しい形の他者理解を示す力を育むことをめざす。その目的は,人の価値観や態度を変えることを追求するCritical Designと通じる。具体的には,携帯端末の特性を活かし,表現メディアを組み合わせ,他者に喜びや新しい視点を与えるコンテンツを,ギフトとして制作するという基本構想を固めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度の研究計画の内,(1)デザイン基礎教育の事例調査と(2)メディアデザイン・アートの事例調査は概ね順調に進展したが,(3)技術面での調査と基本プログラムの開発についてはやや遅れている。 この理由は,教育プログラムの目的を,これまでの研究成果であるインタラクションの中から新しい感性を生み出すという「感覚」の次元から発展し,現実社会の問題,他者の問題に目を向ける必要があるとの方向へ,議論が深まったことにある。携帯端末を使って鑑賞,体験するメディアコンテンツの制作を通し,インタラクティブ性を含んだメディア表現の新しい可能性を追求するための教育プログラムを開発するという研究計画の基本に変わりはないが,その教育の目的を社会とのかかわりを持つ方向へ捉えなおし,それに適した内容の吟味に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度の調査,検討を通し,次の点が確定している。 ・画像、映像、グラフィックス、文字、音声を自由に組み合わせたメディアコンテンツを,ギフトとして制作する。ここで,ギフトとは,他者の希望や問題を調査,理解したうえで,他者に喜びや驚きなどの情動や新しい視点を与えるコンテンツである。 ・そのコンテンツは携帯端末の特性を活かして,鑑賞し、かつ体験するものとする。 これを踏まえ,次年度は次の2点を行う。ひとつめは,市販のソフトウェアを使うことなく、ギフトとしてのメディアコンテンツを簡単に作る環境,コンテンツ制作のためのツールを開発する。シーンに文字、基本グラフィックス、画像、映像、音声を載せ、表示、再生できる機能,タッチやワイプへのインタラクション、携帯端末の持つセンサ(音声、傾き、加速度)入力に応じたインタラクションが指定できる機能を持つことを想定している。このツールにより,教育プログラムのワークショップとしての展開が容易になるとともに、教育プログラムの他の教育現場での適用を可能にする。 ふたつめは,当該年度に議論が深まった教育目的に沿った教育プログラムの具体的内容の検討である。どのような状況において他者を設定するのか,他者への調査はどのように行うかなど実施可能性を含んだ研究を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
「現在までの達成度」で述べたように,デザイン基礎教育並びにメディアデザイン・アートの事例調査を進展させ,そのために予算を集中的に使用した。その結果,この差が生じることとなった。 次年度予定しているコンテンツ制作のツール開発のための費用に追加するかたちで,使用する。
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