研究課題/領域番号 |
25350033
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研究機関 | 同志社女子大学 |
研究代表者 |
有賀 妙子 同志社女子大学, 学芸学部, 教授 (70351286)
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研究分担者 |
真下 武久 成安造形大学, 芸術学部, 講師 (10513682)
森 公一 同志社女子大学, 学芸学部, 教授 (60210118)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | デザイン教育 / メディア表現 / コミュニケーションデザイン / 携帯端末 |
研究実績の概要 |
26年度末に策定した該当年度の計画は,(1)26年度に深めた教育目的に沿った教育プログラムの具体的内容の検討,(2)それに基づいたワークショップの実験的実践、(3)ワークショップ実施のための制作、公開ツールの開発であった。 価値観や背景の異なる他人と出会い、その他者と共に「表現する」行為を通して、相手への理解と共感を深めることを教育プログラムの目的に定め、内容を構築した。具体的には、パートナーとなる相手をインタビューし、共に物語を作り、それをデジタル絵本とするプロジェクトを行う。共同の制作活動を通して学生のコミュニケーション能力を養う。該当年度において、ホスピスの子供や自由に動けない高齢者など、一般には支えられる弱い存在と考えられる人々を、共同する相手として明確に設定した。多くの場合支えられる弱い立場のパートナーがもつ固有の物語をデジタル絵本として表現し、「共同制作者」となることで、支える/支えられるという固定的関係性を越え、社会や他者へ発信する力を持つとともに、学生は他者理解の根源的な次元の学びを得られると期待する。 教育プログラムは、(1)インタビュー、(2)ストーリー作り、(3)絵本としての編集の3つの部分からなる。そのプロセスに必要となるガイド、Webアプリを開発した。インタビュー時に適切な質問をして、相手から話を引き出すためにインタビューガイド、また、ストーリー作りのプロセスで、決めたテーマを起点にストーリーを構成する要素を次々と拡張していくため、ストーリー作りガイドを用意した。Webアプリは、絵本を共同制作者同士で共有するとともに、完成版を公開するツールとして活用するもので,素材ファイルを統合、閲覧する機能をもつ。 本研究が想定する現実のパートナー(病気の子供や高齢者)との制作プロジェクトを実施する前に、進め方、作成したガイドラインやWebアプリを実験するために2つの試行実践を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に述べたように、26年度末に策定した該当年度の計画,(1)26年度に深めた教育目的に沿った教育プログラムの具体的内容の検討,(2)それに基づいたワークショップの実験的実践、(3)ワークショップ実施のための制作、公開ツールの開発、それぞれ概ね順調に進んでいる。 教育プログラムの具体的内容は,ほぼ確定し、ワークショップ実施のための教材開発を試作し、実験的なワークショップの実施ができた。 ツールの開発についてはその機能に変更が生じた。26年度末には、コンテンツ制作のためのツールの仕様として、シーンに文字、基本グラフィックス、画像、映像、音声を載せ、表示、再生できる機能,タッチやワイプへのインタラクション、携帯端末の持つセンサ(音声、傾き、加速度)入力に応じたインタラクションが指定できる機能を持つことを想定していた。しかし、その後の検討の中で、本教育プログラムでは「デジタル絵本」としての物語作りに焦点を置くこととし、絵本には多様なインタラクションを持たせず、シンプルな画面遷移 (音声ファイル再生終了後、あるいはタッチ)にとどめることとなった。そのため、制作ツールとしてではなく、デジタル絵本の共有、公開のためのWebアプリを開発した。ただ、ネットワーク環境がない場においても閲覧できるように、コンテンツを携帯端末ローカルに置き、閲覧するための携帯端末用アプリは必要であり、これは今後開発を予定する。
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今後の研究の推進方策 |
該当年度の実験的実践の結果を踏まえ,次のように研究を進める。 ・ローカルな環境で絵本を閲覧するためのアプリの開発。ネットワーク環境のない場所でのワークショップに備え,制作したデジタル絵本を携帯端末のローカルな環境に保存し,パートナーや関係者が閲覧できるようにする。 ・小児ホスピスの患者あるいは動けない高齢者と学生とでワークショップを実施する。淀川キリスト教病院での実施に向けて,準備を開始している。そこでの子供や高齢者の患者と学生とがパートナーとなって,デジタル絵本を制作するプロジェクトを行う。 ・プロジェクトの実施後,どのような学びが得られたか検討,結果を発表するとともに,普遍性のある学びを得られる教育プログラムとして完成させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
「現在までの達成度」で述べたように,デジタル絵本のインタラクションをシンプルな画面遷移にとどめたことにより,コンテンツ制作のためのツール開発は行わなかった。そのため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
ネットワーク環境がない場においても制作したデジタル絵本の閲覧ができるように、コンテンツを携帯端末ローカルに置き、閲覧するための携帯端末用アプリを開発する。その開発費用に使用する。
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