本研究は、20世紀後半の巨匠であり、アメリカを代表する建築家ルイス・カーン(以下「カーン」と略)の言説分析を通して、その難解なデザイン思想を解明すると共に、根源的とも評されるカーンのデザイン・コンセプトに基づいたデザイン発想・設計支援ツールのモデル化を行ったものである。ベースとなる研究対象は、1973年カーンがニューヨーク・ブルックリンのプラット・インスティテュートで行なった講演記録(英文)を用い 1.(平成25年度)その論理構造の矛盾点を排除することで、カーン自身の重要な創作概念(以下「キーワード」と呼称)を図式化・文章化したかたちで明らかに提示した。またその結果をもとに、一般的に理解が難しいと評される原著の訳注・論注を作成すると共に、図版・解説などを充実させ、理解の容易な研究成果(著作)として定着した。 2.(平成26年度)キーワードの中から設計支援ツールとして手法化の可能な対象を選定し、発想法+設計プロセスモデルとしてステップ化するだけでなく、被験者群を用いたデザイン実験(:デザイン環境の異なる被験者群の比較)とそのプロセス分析を通して、モデルの有効性を検証した。 3.(平成27~28年度)モデルの修正を行い、再度デザイン実験による検証を行うといったサイクル型の研究プロセスを通して、再現性の高いデザイン設計支援ツールとするとともに、修正版カーン発想法として、プロの実務家・デザイナーでも使用可能なものとして定着した。 4.(平成28年度)カーン発想法を実務家が用いた場合の発想プロセスの特徴・学生被験者との相違点について分析した。
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