本研究は、がん患者に対し治療中にも適応できる機能性と美観に配慮したヘアハットの設計理論構築を目的とする。27年度は、26年度の調査資料を基に帽子の試作品を製作し、治療中で脱毛のがん患者8名と経験者3名の計11名を被験者に帽子の着用評価及びヒアリング調査を1ヶ月間実施した。 素材は、絹・綿・毛・カシミアの天然素材を使用し織物と編物(ニット・カットソー)で制作した。デザインは、キャップ型と後ろ結び型。色は、ダーク系とライト系を用いた。帽子は8デザインで、デザイン(被り心地、形体、色等)に対して評価を行った。調査は平成28年2月~3月中に実施し、就寝中、自宅内、外出時にそれぞれ1サンプルを1時間以上着用し、どの帽子が適しているのかを5段階で評価し、その理由を明記した。 結果は以下のとおりである。素材は、絹ニット、綿ニット、カシミアニットの評価が高く、毛ニット、Wガーゼ、綿カットソー、綿ブロードは低かった。就寝中と自宅内に適しているのが、絹ニット(1本・2本取)と綿ニットであった。外出では、絹ニット2本取、カシミアニットが適しており、Wガーゼ、綿カットソー、綿ブロードは適していなかった。形では、キャップ型は就寝中に適しており、フィット感を重視していた。自宅内・外出時ではキャップ型にゆとりが必要との意見もあげられた。色の関しては、好みが表れ志向の差異が明らかになった。ヒアリング調査からは、夏の暑さ対策への要望が高く、帽子の被り方や服との合わせ方などのセミナーや教本への要望もあげられた。 本研究を通じて、脱毛時期に対応した快適なデザイン、夏季や生活シーンへの対応、何よりもファッションとしてのデザイン(色、形体)が重要であることが明らかになった。今後、これらの要素を再考し、日常生活の質向上の一助になるヘアハットの実用化を目指したい。
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