母親の過重な育児負担が問題視され、男女共同参画社会の推進が課題とされるなか、ワーク・ライフ・バランスに配慮した社会システムとジェンダーにとらわれない養育環境の構築が急務とされている。とりわけ養育の当事者がどのような情報や期待を背景に、養育にかかわる決定を行っているのか、どのような支援を必要としているのか男女を問わず対象として探究していくことが求められている。 本研究は、乳児期に不可欠の養育行動であり、また母乳分泌という女性の身体的特性とかかわる授乳を手がかりとして、養育期待と当事者の養育意識を探究し、ジェンダーにとらわれない養育環境の構築に資することを目的としている。 具体的には、授乳に関する情報とそこにあらわれた期待、当事者の栄養法の選択と授乳行動、意識の変化を把握するものである。本年度においては、父親と母親に向けられた授乳者および養育者としての期待の考察、1990年代の自身の当事者調査を含む当事者の意識・行動についても検討を行った。 本研究では、人類学や社会学、社会史など内外のジェンダーと授乳や養育環境に関する先行研究をふまえて視点の整理・検討を行った。そして、父親や保育者など母親以外の授乳者をも視野に入れて、日本の授乳関連情報と養育期待について、ジェンダーの視点で分析してきた。乳幼児期の父親向け情報を詳細に検討することで、父親の育児参加を推進する目的が掲げられている場合においても、二次的養育者としての父親期待がみられることが指摘された。
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