放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)は、学校とは異なり多様な生活行為が行われることや近年の入所児童数の増加等により、会話に支障が出る、児童が大声になる等の問題が顕在化し、音環境整備や落ち着ける空間の確保が必要となっている。本研究は、留守家庭児童の第二の「生活の場」である放課後児童クラブを、落ち着いて生活できるような場所とするために、音環境の観点から、その生活環境を向上させることを目的としている。 平成25年度、26年度の調査研究では、以下の3点を明らかにした。1)児童が生活する部屋の騒音レベルは80dBを超える時間帯があり、ワンルームタイプのクラブの部屋は残響時間が0.6秒を超え、会話の明瞭性や喧噪感が懸念される。2)落ち着いた環境が必要な行為として、休息、昼寝や食後のからだ休め、パニックを起こした児童を落ち着かせる、食事(喧騒感の回避)、帰りの会(話を聞く)、個別指導(話す・聞く)、着替え等がある。3)児童の生活に安定や落ち着きをもたらすことを意図して、おやつの時間や帰りの会では、児童の集団-担当指導員-活動空間を一致させた小規模集団による保育が行われ、また、読書や工作等の行為について専用の小空間が形成されている。 最終年度の平成27年度は、1)~3)の成果をもとに、室内音環境の整備と落ち着ける空間の確保に向けて、生活行為と音環境整備の双方から考案した小空間(児童の使いやすさを考慮した面積で、吸音材を貼った棚やカーペットで形成された小空間)を用いた改善策を考案した。クラブの活動室に見立てた教室に小空間を設置し、残響時間を測定した結果、吸音性のある材料を多く用いた小空間の形成や、吸音性能のあるカーテンの使用により、室の残響時間を減らすことができた。 今後は、改善案を既存のクラブに設置し、音環境の改善効果と児童の生活行動への影響を明らかにする。
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