研究課題/領域番号 |
25350053
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研究機関 | 和洋女子大学 |
研究代表者 |
佐藤 宏子 和洋女子大学, 生活科学系, 教授 (60165818)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 直系制家族 / 中山間地域 / 農村家族 / 追跡研究 / 世帯変動 / 世代交替 / 直系家族制度 / 結婚難 |
研究実績の概要 |
1982年に静岡県志太郡岡部町朝比奈地域(現藤枝市)に居住する30~59歳の有配偶女性475人に対して第1回調査を実施した。その後、同一対象者に対して1993年に第2回、2005年に第3回のパネル調査を実施した。さらに、2013~14年には住民基本台帳を閲覧し、280世帯(第1回調査有効回答者世帯の58.9%)の4時点パネルデータを得た。 本研究の3年目に当たる2015(平成27)年度は、日本有数の茶生産地域において実施した上記の長期反復調査の結果をパネルデータとして完成させ、地域社会の社会経済的変化に伴って、32年間に調査対象者の世帯構成と世帯規模はどのように変化したか、世代交替と直系家族の再生産はどのように展開しているかをSPSSを用いて分析した。 分析の結果、次の5点が明らかになった。①平均世帯人員数は5.35→4.83→4.34→3.69と減少し、最頻値は82年の6人世帯、93年の7人世帯から、2014年には2人世帯となり、世帯規模は著しく縮小している。②3世代世帯と4世代世帯を合わせた直系家族は70.7%→61.4%→49.2%→39.3%と減少している。③「対象者世代+未婚子」の核家族世帯は32年間にわたって25%前後で安定推移しているが、2014年の同居未婚子最年長者の平均年齢は46.6歳まで上昇し、同居未婚子の約75%が40歳以上、37.0%が50歳以上の未婚者で占められている。この結果は、子世代の結婚難の深刻化を示している。④「夫婦のみ世帯」は82年の1.8%から05年の17.5%へと増加したが、05年以降は単独世帯が増加している。⑤世代交替に伴って直系家族の中心的世帯構成は「親世代+対象者世代+未婚子」から「対象者世代+子世代+孫」へと移行した。しかし、82年の直系家族のうち14年に次世代直系家族を再生産できた世帯は33.3%にとどまっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
第二次世界大戦後、日本の家族制度は法制度において、家制度(直系家族制度)から夫婦家族制度へと転換した。また、家族社会学の通説では、現実生活上でも日本の家族制度は1960年代以降、直系家族制度から夫婦家族制度へと転換し、世帯形態の核家族化と親族関係の双系化という大きな変化が生じたとされている。 本研究はこの家族社会学の通説に対して、1982年~2014年の長期反復調査の実証データから農村家族の世帯変動と世代交替の諸相を分析して、戦後70年が経った現代家族においても直系家族制度が維持・存続していると反論することを目指している。本年度行った世帯構成の変動経路と直系制家族の再生産を果たした世帯数などの分析によって、現代家族も現実生活上は直系家族制度が維持・存続している可能性が高いことを明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度である平成28年度は、主に次の4点を明らかにする。①1982年、1993年、2005年、2014年の4時点における世帯構成の推移、主要な世帯形態の推移、子世代の結婚難について分析を進める。②「直系制家族の再生産を果たした変動経路・世帯」と「夫婦制家族へ移行した変動経路・世帯」について、主要な経路を明らかにする。③調査対象者世帯の世代更新の状況を「孫世代更新」「子世代更新」「更新未確定」「更新困難」に分類し、4時点における世代交替の様相を明らかにする。④夫婦制家族への移行、世帯変動の停滞を引き起こしている要因を明らかにする。 以上の調査結果をもとに、現代家族における直系家族制度の維持・存続を考察し、32年間の追跡研究の成果を学会で発表し、報告書の執筆を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の旅費、人件費・謝金の支出を予定よりも低額に抑えることができたため、2,844円の次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本金額は、平成28年度のデータ分析費用の一部として使用する予定である。
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