都市住民が身近にできる壁面緑化の手法として、ゴーヤ等を用いたグリーンカーテンが急速に普及しつつある。今後、市街地部の高層住宅にもこの手法を適用し、環境負荷の軽減を図ることが有効と考えられる。本研究は、グリーンカーテンを高層住宅に普及させていく上で、体感指票を用いた温熱環境等の物理的環境と植物の種類、方位、高さの違いによる生育への影響について実証的な検証を行うとともに、植物の香りが都市住民の生理的・心理的な面への効果分析を通じて、過密化した都市市街地においてゆとりと潤いのある生活環境の保全と改善に資することを目的とするものである。平成25年度の結果から、グリーンカーテン有りの場合にはなしの場合と比較して、MRT(平均放射温度)についてはピーク時には40%以上低減した。また、WBGT(湿球黒球温度)では1~2℃の低減が図られ、熱中症のリスクを1段階緩和できることを確認した。平成26年度は、ヘチマとオカワカメを屋上において東西南の三方向に設置して、方位の違いによる生育への影響を観測した結果、いずれの植物も南面の生育状況が最も良かったが、西面はヘチマの方が生育は良く、西日遮蔽効果が期待できる。平成27年度は、高層階の屋上にゴーヤ、チョウセンアサガオ、パッシヨンフルーツの3種を設置し、高層階での植物の生育状況への違いについて被覆状況を観測した結果、「巻きひげ型」タイプのゴーヤが風の影響を強く受けて、伸長方向が変化したのに対して、パッションフルーツではゴーヤほどの変化は見られなかった。「巻つる型」のチョウセンアサガオは、風の影響を受けずにネットのタテ方向に伸長し、全面を被覆した。一方、アロマとガーデンとの組み合わせによる生理的効果をPOMS試験により、比較検証した結果、アロマテラピー単独および、アロマテラピー+グリーンカーテンの併用において、心理・精神面における改善の結果が得られた。
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