研究課題
母乳中のビタミンK濃度が低いことに加え、胎盤からのビタミンKが胎児移行しにくいことや乳児の腸内細菌でのビタミンK産生量が少ないなど、乳児はビタミンKが不足しやすい。また、ビタミンKの不足は乳児では乳児ビタミンK欠乏性出血症をきたすリスクになりうる。現在、乳児ビタミンK欠乏性出血症の予防を目的として、ビタミンKの筋肉注射やシロップによる投与が行われている。しかしながら、筋肉注射は筋肉拘縮など、シロップ投与は壊死性腸炎を発症する可能性がある。本研究では、授乳婦に納豆などビタミンKを多く含有する食品を摂取させることが母乳中のビタミンK濃度にどのように影響するかを検討するため、母乳中のビタミンK濃度を測定し母乳中のビタミンK濃度のデータの蓄積を行った。母乳中のビタミンK濃度はHPLCを用いた絶対検量線法にて測定した。さらに、本研究で測定した母乳中のビタミンK濃度と先行研究での母乳中のビタミンK濃度を比較した。母乳中のビタミンK濃度の測定結果は、PK濃度が5.9±1.0ng/mL、MK-4濃度が0.32±0.12ng/mLであった。日本人の母乳中のビタミンK濃度を測定した先行研究ではPKとMK-4の合計値として5.17ng/mLと報告されている。この先行研究の数値と比較すると本研究の測定結果は同程度であった。母乳中のビタミンK濃度の測定法を確立することは、授乳が摂取する食品中のビタミンKが授乳婦の体内から母乳中に移行するメカニズムを解明する一助になると考えられた。さらに、現在の乳児ビタミンK欠乏性出血症の予防法を、ビタミンKを含有する製剤の筋肉注射や経口投与など乳児にとって侵襲性のある投与法から納豆の摂取といった食事と母親の母乳を介した乳児にとって侵襲性のない投与法へ変更しうる可能性を明らかにしたことは意義があると考えられた。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Journal of Agriculture Science, Tokyo University of Agriculture
巻: 60 ページ: 169-176
日本健康医学会雑誌
巻: 2 ページ: 171-177