研究課題/領域番号 |
25350067
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪市立工業研究所 |
研究代表者 |
懸橋 理枝 地方独立行政法人大阪市立工業研究所, 有機材料研究部, 研究主任 (70294874)
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研究分担者 |
東海 直治 地方独立行政法人大阪市立工業研究所, 有機材料研究部, 研究主任 (40416300)
前田 悠 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (20022626)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 低分子ゲル化剤 / アミドアミンオキシド / ハイドロゲル / オルガノゲル / 耐塩性 / 界面活性剤 |
研究概要 |
水および種々の溶媒(有機溶媒、塩水溶液)をゲル化する、高性能な低分子ゲル化剤として、アミドアミンオキシド型界面活性剤(AAO)を開発した。AAOは、炭化水素鎖、アミド基、スペーサー、アミンオキシド(AO)基からなり、それぞれのパーツを適宜変化させることで分子集合体構造や溶液物性を制御できる点が特長である。今回は、水素結合部位であるアミド基の数と配列、アミド基‐AO基間のスペーサー長、および炭化水素鎖長を変化させた。 合成したAAOについて、水、2%食塩水、および種々の有機溶媒(1,4-ジオキサン、クロロホルム、トルエン)に対するゲル化・増粘挙動を調べた。水に対しては、アミド基が向い合せ構造の場合、アミド基の数が多い方が、またスペーサーが長い方が、ゲル化・増粘効果が高かった。アミド基の数が多いことは水素結合部位が多いことに対応する。また、スペーサーが長い方が水中での構造形成に有効であった。また、今回用いたAAOの多くは、2%食塩水に対しても十分なゲル化・増粘効果を示した。有機溶媒系では、アミド基の配列が向い合せで、かつアミド基の数が多い(3個)試料は極性の高い有機溶媒を、アミド基を向い合せに配列し、かつアミド基の数が比較的少なく(2個)スペーサーが長い場合、低極性溶媒をゲル化・増粘する傾向があった。アミド基の数の増加は構造形成能向上に対応するが、一方で親水性を増加させることにもなる。低極性溶媒に対しては、疎水的な試料がより構造形成に優れていたといえる。 次に、AAO水溶液の粘度の温度依存性を調べたところ、多くの試料についてある温度で粘度が急激に変化し、その温度(ゲル化・増粘温度)はアミド基の数が多い、あるいはスペーサーが長い方が高かった。一方、炭化水素鎖としてオレイル鎖を有するいくつかの試料では、広い温度範囲で、粘度は温度にほとんど依存しなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた(1)化学構造を系統的に変化させたアミドアミンオキシド型界面活性剤の合成、(2)水、塩水溶液、有機溶媒に対するゲル化性能のスクリーニング、(3)ハイドロゲルの最小ゲル化濃度とゲル化・増粘温度の評価は、ほぼ予定通り進んでいる。特に、水系のゲル化・増粘温度は、炭化水素鎖長やアミド基の数、スペーサー長に強く依存しており、界面活性剤の化学構造との強い相関が明らかとなった。また、(4)ゲル化機構の考察についても、分子集合体の構造を極低温電子顕微鏡観察により検討中であり、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究の結果、温度と粘度を同時に測定できる振動式粘度計で、水系のゲル化・増粘温度を評価できることがわかった。今後は塩水溶液および有機溶媒でのゲル化・増粘温度の評価を同様な方法で行う予定であったが、粘度計の構造上、揮発性の溶媒や100℃を超える沸点の溶媒では測定が困難であることが分かった。塩水溶液に対しては当初の予定通りに実験を進めるが、有機溶媒のゲル化挙動に関しては、回転粘度計を用いて溶液の粘度の濃度依存性を検討するように計画を変更する。広い濃度範囲において、粘度が濃度とともに増加するのか、あるいは低濃度ではほとんど粘度が増加せず、ある濃度で急激に粘度が増加するのかは、分子集合体の構造やゲル化機構に関係していると考えられる。また、本低分子ゲル化剤・増粘剤の化粧品や香粧品への応用を考えた場合、粘度の濃度依存性は非常に重要である。 さらに、ゲルの粘弾性評価および電子顕微鏡観察を行い、分子の化学構造と分子集合体構造、およびゲルのレオロジー挙動を関連付け、分子設計にフィードバックする。これらの結果をもとに、工業的に極めて重要な性質であるチキソトロピー性の簡便なスクリーニング法を検討し、チキソ性付与のための分子設計を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
メーカーのセールを利用した試薬購入などで物品費が予定より低額で済んだことと、招待講演(旅費不要)などで旅費が予定より低額で済んだため、次年度使用額が生じた。 当初予定していなかったが、次年度にポルトガルで開催される界面活性剤に関する国際シンポジウムで成果を発表する予定である。
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