研究課題/領域番号 |
25350068
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
倉林 徹 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90195537)
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研究分担者 |
淀川 信一 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90282160)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 繊維種鑑別 / テラヘルツ分光分析 / 多変量解析 / セルロース結晶 |
研究実績の概要 |
本研究は,衣服等の原料となる再生繊維(レーヨン,キュプラ,モダール,テンセル),植物由来繊維(綿,ヘンプ,リネン,ラミー),動物繊維(山羊毛,羊毛)を分析対象とし,テラヘルツ分光法を用いて繊維に内在する水素結合,分子間結合,および結晶構造に対応した格子振動のエネルギー状態を検出し,新たな繊維種の識別手法見出そうとするものである。本研究では昨年度まで各種繊維種を77Kにて凍結式粉砕し, 粉末化した試料を秤量し,ポリエチレン微粉末と混合して圧粉することにより所定濃度のテラヘルツ分光分析用ペレットを形成してきた。しかしこの手法では凍結粉砕プロセスの時間や頻度により試料に含有される微結晶が損傷を受けるため,テラヘルツスペクトルが変化することが明らかとなり,新たな裁断方法を開発し安定なスペクトル情報を得た。 本年度実施した技術構成は,①繊維試料のミクロトームによる裁断とその裁断サイズの最適化,②テラヘルツ分光分析による裁断した試料の濃度依存性測定と混紡率測定,および③取得したスペクトル情報の多変量解析(主成分分析)を用いた混紡率の定量測定法の検討である。 特に,セルロースを主体とする植物由来繊維のテラヘルツ分光分析においては,セルロース結晶構造の識別が鍵となるが,この結晶度合いが凍結粉砕プロセスの頻度によって変化することを初めて確認し,結晶度の劣化を防止するため新たにミクロトームを用いた裁断方法を導入し,繊維の長さ方向に特定のサイズに裁断した場合に最も結晶度の良いテラヘルツスペクトルが得られることを確認した。さらに,この手法を用い2種類の繊維を一定の割合で混合した混紡試料を作製し,テラヘルツスペクトルの多変量解析(主成分分析)を行うことにより混紡率を高精度で分析できることを確認した。このプロセスは動物繊維にも適用しその有効性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で計画したセルロース系繊維のテラヘルツ分光分析による識別手法については,昨年度までに行った凍結粉砕の最適条件の探索において新たな問題点が見つかり,凍結粉砕では安定なスペクトルが得られないことから,新規な裁断プロセスを採用しスペクトルデータベースを構築し直した。この手法ではハンドミクロトームを用い,繊維を長さ方向に特定のサイズに切断したときに安定なスペクトルが得られることを確認した。この手法は当初予定していたものではなく,実験を進める中で見出したものであり顕著な効果が期待されることから特許出願(PCT出願)を行った。この方法を用いて作製した試料のテラヘルツスペクトルを多変量解析し,特定の周波数帯を選ぶことにより繊維の混紡率を高精度に識別できることがわかった。この結果はすでにPCT出願し,国際会議に登録済みである。これらの技術は実用が見込まれるものであり当初の計画以上の進展であると思われる。一方,本年度は上記に示すようにセルロース系繊維にほぼ限定する形で研究を進めたため,動物繊維の識別に関しては当初の計画に対し遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
各種繊維種のテラヘルツデータベースとスペクトル情報の多変量解析を用いた繊維種識別法を,未知の繊維種識別に適用するなどの実証試験を実施する。実施に当たっては検査協会などに協力を依頼し,本研究成果の新規な繊維種識別法が,検査協会が行っている検査に対して有効かどうかの検証試験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定では国際会議(アメリカ)への参加を予定していたが,都合により取りやめたため旅費の実支出額が当初予算を下回り,次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は国際会議(香港)への参加を予定しているが,学会参加費および旅費の一部に当てる予定である。
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