本研究は全国の伝建地区における生活文化の継承と歴史的町並み・集落の保存・継承を一体的に実現していくための地域共創の住まい・まちづくりの多様な実践とその現代的意義を明らかにすることを目的とした。前年度までの研究成果を踏まえ、今年度は主に次の研究成果を得た。 1.愛媛県U小学校と岐阜県S小学校の総合的な学習の時間において民家ペーパークラフトを活用した町並み保存の授業実践を行った。自分の手で模型を作り上げるプロセスを通して児童は気候・風土、歴史、文化に根ざした民家の構造、間取り、住まい方について理解を深め、伝統的町並み・集落の保存・継承の重要性を学ぶことができた。また、ICTや学生サポーターの導入は子どもの主体的な学びに有効なことを確認した。 2.佐賀県鹿島市浜中町八本木宿伝建地区内の山口醤油醸造場のペーパークラフトを開発した。鹿島市酒蔵通りの民家や町並みについての学習用教材として活用が期待される。 3.全国の伝建地区の中から住まい・まちづくり学習のモデル的事例の収集・分析を行った(佐賀県H小学校、愛媛県I小学校、岐阜県S小学校、沖縄県T小学校等)。いずれも地区の特性を生かし伝統行事との連携を図りながら、学校と地域住民・自治体(教育委員会)・町並み保存団体・専門家(建築士等)・NPO等との連携によるユニークな住まい・まちづくり学習が実践されていることを明らかにした。 4.これまでに科研費等で開発した民家ペーパークラフトの概要や学校教育での導入事例を紹介したリーフレット(2種類)を作成し、学校・大学等の関係機関へ配布した。 以上を含む3年間の研究により、全国の伝建地区を対象とした民家・町並み・まちづくり学習の多様な実践とその実現に向けた地域共創の仕組みを明らかにするとともに、子どもの主体的な学びを支援する町並み保存学習教材としての民家ペーパークラフトの開発と授業実践を行った。
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