【平成28年度に実施した研究の成果】最終年度の研究目的は、これまでの研究成果をもとに大正期の服装改善運動推進者である尾崎芳太郎の考案した和洋折衷服の再現を行い、和服から洋装を受容する過程を明らかにすることである。具体的には、平成26年~27年度から継続する尾崎の提唱した改良服の製作法の分析及び製作を行い、実作することにより視覚的にも着装面でも、着用の可否についての検証を実施した。その研究成果を公開するためのポスター発表の準備及び展示会の準備等、今年度の最終目的である研究成果も公開準備については実施することができた。 【研究期間全体を通して実施した研究成果】(1)服装改善運動の推進者である尾崎芳太郎の著書『是からの裁縫前編』『是からの裁縫後編』に収録される考案服の再現を行い、新たに考案された和様折衷衣服が着装可能か否かについて検証した。尾崎が提唱した改良服の解説文及び出来上がり予想図を基に、各改良服の製作過程や技法の分析を行い実作に取り組んだ。再現した考案服の一部については、論文発表を行った。また展示及びポスター発表の形で公開する準備を行った。(2)服装改善運動について、改良服を考案した背景として継続してまとめた。本研究期間において明らかにした点として、①大正期の生活改善運動における服装改善運動の展開、②明治期の衣服改良運動と大正期の服装改善運動との対比、③服装改善運動家の尾崎芳太郎の考案服の復元、④日本と米国の婦人雑誌掲載の誌上講習会で示された改良服の対比などの4項目についてである。特に服装改善運動における考案服の実作からみえる実生活への影響と生活の変革について検討し明らかにした。また、再現した実作の考案服の製作過程及び着装を通して、和洋折衷の考案服の提案が合理的な衣生活の構築に及ぼした影響と普及の限界についても検討を行い、研究成果の一部は既に論文として発表した。
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