研究課題/領域番号 |
25350075
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
米田 守宏 奈良女子大学, 生活環境科学系, 准教授 (20158538)
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研究分担者 |
井上 尚子 椙山女学園大学, 生活科学部, 講師 (80184753)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 椅子用充填材料 / 椅子張り地 / 力学特性 / 風合い / 圧縮・回復特性 / 保温性 / 有効熱伝導率 / 官能評価 |
研究実績の概要 |
平成26年度は以下のテーマについて検討を行った。 (1)椅子張り地の力学特性・物理特性と風合いおよび快適性との関係:椅子張り地の風合いと快適性との関係を明らかにすることを目的として、市販の椅子張り地試料89種を使用して、布の力学特性をKES-FBシステムで、初期熱流束最大値qmaxを冷温感テスターで計測した。一方で、椅子の風合いに関連すると考えられる接触冷温感評価、布の滑らかさ評価、布の圧縮柔らかさ評価、布の快適性の4項目について官能試験を実施した。人間に適合する椅子張り地の基本的な物性と官能評価との関係を調べた。 (2)有効熱伝導率測定に基づく繊維集合体の保温性の評価および設計:椅子用充填材料の快適性の一要因として保温性が重要であるが、本研究では有効熱伝導率の測定に基づく繊維集合体の保温性の評価法および設計法に関する検討を行った。サーモラボⅡ熱移動特性測定装置を用いて低体積分率における有効熱伝導率を測定し、有効熱伝導率曲線を求め、非線形回帰分析を行った。熱伝導率の成分分離を行った結果、繊維集合体の有効熱伝導率に対する寄与が最も大きいのはガス伝導成分であり、次いで繊維伝導成分であることが判明した。輻射伝熱成分は本体積分率の範囲内で無視できるほど小さい。以上の知見は、伝熱機構を考慮に入れた繊維集合体の保温性の評価/設計に役立つ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
椅子用充填材料は椅子張り地と組み合わせて使用されるため、椅子張り地の物理特性と快適性との関係を捉えることは椅子用材料の性能評価および設計にあたって重要である。本年度は多数の椅子張り地試料の物理特性の測定および官能試験の実施を通じて、椅子張り地に特徴的な力学特性および物理特性を明らかにし、官能試験との対応関係を捉えることができた。一方、椅子用充填材料に要求される快適性能のうち、特に冬季の使用に際して保温性が非常に重要であるが、繊維集合体の有効熱伝導率測定に基づく、伝熱機構を考慮した保温性の評価法および設計法を確立することができた。本方法は椅子用充填材料のみならず繊維状断熱材料一般の保温性の評価に応用可能な成果であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
椅子用充填材料の新素材として注目されているポリエステル系モノフィラメント集合体、ブレスエアー(商品名)およびエアーウィ―ブ(商品名)を試料として使用し、その圧縮特性・圧縮粘弾性特性の特徴について明らかにし、現在充填材料として広く使用されているポリウレタンフォームとの相違を検討する。実使用時を考慮して、椅子張り地の繰り返し圧縮・回復試験による物性変化、内部素材との関係を風合いや熱伝達特性と快適性との関係から明らかにする。さらに、椅子用充填材料と椅子張り地の組み合わせからなるシステムに関して、使用時を想定した荷重条件に基づく圧縮変形の数値シミュレーションを実施することにより、椅子用材料の物性値と座り心地との関係を総合的に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
金額は26,969円と少額である。これは商品購入時に生じた差額である。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品の購入に充てる予定である。
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