研究実績の概要 |
本研究は,生活者自身が住宅内で体感温度を認知すること(見える化)により,居住環境の安全と健康の確保を促進する問題解決型の研究である。体感温度を「見える化」≒「可視化」≒「数値化」することにより,劣悪な温熱環境をがまんしすぎず,温熱環境を改善し,住宅内でのヒートショック(以下HS)や熱中症を予防する行動変容を促す仕組みを研究する。 25年度には,京都府内の高齢者が居住する住宅を対象に,住宅内温熱環境把握(温度認知)実態とHS及び熱中症予防対策の現状調査を行った。その結果,夏期には熱中症危険域の高温,高湿になっている実態,冬期には,多くの住宅で,寝室と便所の温度が10℃以下の低温環境で身体への負担が危惧される。温度認知では,あまり正しく把握できていないことがわかった。 26年度には,25年度の調査対象者から訪問調査に同意を得られた対象者に,詳細なヒアリング調査と温度湿度測定と温熱環境制御の実態調査を行った。ヒアリング調査は住宅の状況,温湿度への関心と健康行動等,夏期には防暑行為を,冬期には防寒行為を質問した。また,冬期には,同意の得られた希望者に便所と脱衣所の窓の簡易断熱を施工してその効果を検証し、どの住宅も心理的な効果を感じていた。 27年度には,夏期に簡易な日よけ対策として,窓にシェードを設置して,温度湿度測定を行ったが,期間中の天気がよくなかった。そのため,28年度に有料老人ホームで,自立して生活している居住者を対象にした調査研究を実施した。事前アンケート調査と熱中症対策講演会を実施,モニター10軒に日よけシェードを設置し,前後に居間で簡易WBGT計の読み取り記録とロガーによる自動記録を行うとともに、ヒアリング調査を実施した。その結果,シェード設置前後の日平均室温は, 9軒の住戸で低下が見られた。居住者が体感的に涼しく感じており、シェード設置によりある程度の効果があった。
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