本研究は、江戸時代の呉服注文・制作に関し、(1)どのような場所で、どのような手順で受注し、(2)どのような台帳や仕様書を作り、(3)どのような職人が、どのような手順で制作したのか、(4)制作に際してはどのような下図や作業指示書が制作されたのか、(5)どのようにして価格設定し、納品と代金請求はどのようになされたのか、(6)また納品と代金請求などに際してはどのような書面が取り交わされ、(7)呉服屋では記録のためどのような文書を保管し、あるいはどのような文書が新たに作られたのか、などを、江戸時代の呉服関連資料と現存染織資料を使用して明らかにすることを、目的とするものである。 研究の最終年度である平成27年度においては、(1)25年度、26年度に引き続き、現存呉服作品の調査を行うとともに、(2)2年度に渡って収集してきた呉服関係資料の整理、データ化を行った。(3)更に収集した資料及び調査資料からの研究・考察を反映した結果、成果物として、共立女子大学家政学部紀要第62号(平成28年1月発行)において、「新発見の「紺木綿地革札付羽織(こんもめんじかわざねつきはおり)」の制作年代と用途に関する一考察」を執筆した。 (4)3年間の研究をまとめ以下の結果を得た。結果1.江戸時代における衣服の調達は、着用者が呉服商に発注し制作させるオーダーメイドものと、着用者が自ら生地や材料を調達(購入する場合と自製する場合がある)し、制作するものとがあったが、これらのほかにわずかではあるが、既製品を購入するレディーメードがあり、これらは着用者の経済力に応じて行われていたことが分かった。結果2.呉服注文は、呉服屋に対して武家男性と女性、町人男性と女性で異なる発注過程をとっていたことが分かった。結果3.呉服制作の仕様の決定や制作プロセスも、武家男性と武家女性・上流町人男性・上流町人女性で異なることが明らかになった。詳細は研究成果報告書で報告する。
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