人体と熱流束計を用いた着衣熱抵抗測定データの蓄積と再現性の有無を確認するため,前年度とは別の被験者を用いて追加実験を行った.さらに,人体を用いた別の測定方法を検討するため,体表面からの放熱量測定を呼気代謝分析装置による着衣熱抵抗測定実験も行った. 追加実験の結果から,サーマルマネキンによる着衣熱抵抗が約0.6cloであったのに対して,人体と熱流束計を使った方法による着衣熱抵抗はおよそ0.2から0.6cloとなり,昨年度の結果と同様に,人体と熱流束計を用いて測定した着衣熱抵抗は,サーマルマネキンによる着衣熱抵抗よりも小さな値になる傾向があることが改めて示された.ただし,測定値には被験者や気温,姿勢の違いによるばらつきがみられた.熱流束計のコードの測定結果への影響が考えられることから,測定方法の改良が課題として残された. 人体と呼気代謝分析装置を用いた着衣熱抵抗はおよそ0.3から0.6cloであった.熱流束計による測定結果と同様に,サーマルマネキンによる着衣熱抵抗よりも小さい値となる傾向が示された.被験者や気温,姿勢の違いによる測定結果のばらつきは熱流束計実験よりも少なくなったが,体表面温度の測定をコードがない装置によることが要改善項目として残された. 気温と表面温度および体表面からの放熱量の関係を検討した結果から,気温の高低や着衣の有無に対して,皮膚温を33℃に一定に制御したサーマルマネキンは最大で約130から90[W/m2]までおよそ50[W/m2]放熱量を変動させるのに対して,人体は皮膚温を2~3℃変動させて,放熱量を50[W/m2]前後に維持するよう反応することがうかがわれた.このような反応の違いが,サーマルマネキンを使った方法に対して,人体を使った方法での着衣熱抵抗が低く測定される要因となったと考えられた.人体を使った測定方法について,人体の体温調節機能を前提とした測定方法について検討することが課題として残された.
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