2013年、アワビ加工時の廃棄物である肝を用いたアワビ肝醤油が開発されたが、原料の肝の独特なにおいが製品の品質に大きく影響するため、本研究に着手した。2014年度は、アワビ肝醤油の香気改善方法としてpHの調整法、大豆醤油の混合法及び酵母による再発酵法の効果を報告した。2015年度では、酵母による発酵法の発酵条件によるアワビ肝醤油の香気成分の組成及び変化を報告した。2016年度では、アワビ肝醤油の商品化に向けて香気の改善方法として、醤油麹の発酵法でアワビ肝醤油の香気改善効果について考察した。 SPME法により醤油麹による発酵したアワビ肝醤油のヘッドスペース成分を抽出し、GC-O分析で香気の質と感知できる成分数を評価し、AEDA (aroma extract dilution analysis)及びGC-MS分析で香気寄与度が高い香気成分を同定した。さらに、麹発酵法と酵母発酵法によるアワビ肝醤油の香気成分の組成を比較した。その結果、醤油麹による発酵したアワビ肝醤油では、GC-O分析で感知できた香気成分数は39個であった。特に、「果実様」、「香ばしい」と「不快臭」成分数が多く感知されたが、「甘い」香気成分は1種であった。AEDA分析より、麹発酵したアワビ肝醤油では、2-phenylethanol、dimethyl trisulfide、1-octen-3-one やmethionalなどの寄与度が高く、主に発酵臭、チーズ様の香気特徴を持っていることが示唆された。一方、酵母による発酵したアワビ肝醤油と比較すると、麹発酵した試料は甘い香りが弱いが、GC-O分析で感知できた香気成分の数がより多かった。また、AEDA分析の結果、麹発酵した試料の香気成分の寄与度は酵母発酵による試料の同じ成分の寄与度より高かった。従って、醤油麹と酵母を用いた発酵方法は香気改善に共に有効であると考えられた。
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