研究課題/領域番号 |
25350091
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
上野 茂昭 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (80410223)
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研究分担者 |
君塚 道史 宮城大学, 食産業学部, 助教 (90553446)
島田 玲子 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (60331451)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 非加熱加工 / 高圧処理 / 過冷却凍結 |
研究概要 |
細胞内部は種々の膜構造に隔てられており,その膜構造が大きな電気絶縁体となるため,細胞膜の損傷や破壊などによる膜構造の違いが誘電特性の違いとして検出される.本研究ではまず,農産物を試料とし,高圧処理(100MPa から600MPa)または過冷却凍結(超急速凍結)を施した.続いて,内部構造の変化を計測可能なプラチナコーティングしたステンレス電極をLCRメータ(日置電機,3532-50)に接続して,100Hzから5MHzの範囲において,室温で非破壊的に誘電特性を計測することにより,試料の内部構造変化と相互関連性の高い誘電特性パラメータを抽出した. 未処理試料ではCole-Cole円弧の半径が2500ohm程度であったのに対し,高圧処理および過冷却処理を施した試料では,Cole-Cole円弧が小さくなった.また150から180MPaの圧力処理により,内部構造が大きく損傷を受け,200MPa程度の圧力によって,Cole-Cole円弧の半径は見かけ上消失した. このことから,Cole-Cole円弧を形成する細胞内部構造,とりわけ細胞膜での膨圧は150MPa程度から減少し,膜脂質の相転移などが生じていることが示唆された.また,過冷却凍結または過冷却を伴わない凍結を施した試料においてもまた同様にCole-Cole円弧は消失した.過冷却が生じる凍結は,過冷却解消時に急速な凍結が生じることが知られている.そのため,試料の選択基準を精査することによって,過冷却凍結による細胞損傷を定量化することが可能であると考えられた.また農産物の膜構造が可逆的に修復可能な圧力領域は170MPa程度が限界であることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高圧処理および過冷却凍結などの非加熱加工を施した試料について,その内部構造の損傷を定量的かつ簡便に測定可能なパラメータを抽出することができたため.
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今後の研究の推進方策 |
農産物の膜構造が可逆的に修復可能な圧力領域は170MPa程度が限界であることが示唆された結果を踏まえ,農産物に機能性を富化し,その後内部構造への損傷が小さな凍結・解凍方法および温度条件プログラムを開発することにより,高付加価値を付与した農産物を長期保存可能となるため,複数の非加熱食品調理加工法の組み合わせ実験を行う. 過冷却の発生要因は不確定要素が多く,その厳密な制御が現時点では困難である.過冷却凍結の条件が定量的に設定することを可能とするために,より精密な冷却のコントロールが必要であるため,実験系を再構築中である.
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