現在、高齢者世帯が増え、少人数で食べることも多いことから、一人や二人分でも美味しくかつ簡便に調理することが望まれている。このような背景の下、電子レンジは炊飯や調理にも利用されるようになってきている。しかし、従来の調理と比較して加熱のメカニズムが全く異なるため、必ずしも美味しく調理できていない。そこで、本研究では、加熱メカニズムを明確にするため、解析に必要な食品素材の誘電物性を測定するとともに電子レンジ解析モデルを作成し、解析手法の確立を行った。 炊飯過程においては水の減少とともに、その状態は(水と米の混合)から(空気と米の混合)に変化し、その状態によって誘電物性は大きく変化する。そこで、平成26年度において、まず(水と米の混合)および米の誘電物性を測定した。その結果、(水と米の混合)の値は水と米自体の誘電率から対数混合則を用いて予測可能なことを示した。 平成27年度においては、(空気と米の混合)について検討を行った。プローブ接触型の誘電率測定装置を用いて(空気と米の混合)の誘電率を測定したが、再現性のある値は得られなかった。空気と米では誘電特性に大きな差があるため、プローブに接触している米の割合によってその値が大きく異なることが理由として考えられた。 (空気と米の混合)体としての誘電率測定は困難であったため、空気と米を独立した物体として取り扱うモデルを作成し、電子レンジ加熱特性について検討を行った。フラットテーブル型の電子レンジ解析モデルにおいて食材部分を細かく分割した要素を作成し、実際のご飯の空隙率に相当するように、要素にランダムに空気と米の物性を与えた。改良したモデルを用いて、ご飯加熱時の温度分布を予測計算したところ、その傾向は実測値と良好に一致した。以上から、炊飯過程を解析する上で重要な、(水と米の混合)および(空気と米の混合)における解析手法が確立できたと言える。
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