研究課題/領域番号 |
25350094
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
中本 裕之 神戸大学, システム情報学研究科, 助教 (30470256)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 食感センサ / フードテクスチャ / 食感知覚 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、食感センサと咀嚼運動機構に食感知覚処理方法を組み合わせた食感計測システムの実現及び食感知覚の定量化である。ヒトは歯根と歯槽骨の間でクッションの役割を担う歯根膜という組織をもち、咀嚼時の歯根膜の伸縮を同膜内にある応答特性の異なる2種類の受容器によって検出し、最終的に脳内において食感として知覚する。これまで本研究では、この歯根膜の柔軟性と受容器の特性を備えた食感センサを提案した。磁気抵抗素子とインダクタを計測素子とし、食品の破断の際の変位を磁界強度の変化として検出することが可能な食感センサを実現した。 平成26年度の成果としては、食感センサの設計と製作、特にインダクタの感度を向上させるよう設計を行った。併せてセンサの小型化も実現した。実験によりサクサク感のある菓子類の食感の定量化が可能であることを、応答データの確認により確認した。さらに、食感知覚処理方法の検討として、サポートベクタマシンを用いた食感判別方法を提案した。磁気抵抗素子の時系列のデータとインダクタの周波数系列のデータの2つを特徴量として入力し学習することにより90%以上の確率で菓子類4種類の判別が可能であることを明らかにした。さらに、学習に用いていない菓子類の特徴の抽出が可能であることを確認した。 これらの平成26年度の成果により、食感センサの設計の改善をすることで計測性能が向上し、サポートベクタマシンを用いて食感判別が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書の計画では、平成26年度では食感センサの小型化を挙げた。食感センサの小型化に伴う感度の低下を防ぐため、磁気抵抗素子とインダクタの配置を設計・製作、評価を行った。実験の結果から従来のもの比較して特にインダクタの出力の高感度化を実現できた。このインダクタの出力は市販の食感計測器では得られない信号として評価することができる。申請書の計画では、食感知覚処理方法の提案も挙げた。その処理方法として、サポートベクタマシンを用いた強化学習法を組み込んだ食感知覚処理方法を提案し、磁気抵抗素子の時系列データとインダクタの周波数系列データの2つを特徴量として学習することにより、90%以上の正答率でサクサク感のある菓子類などの判別が可能であることを明らかにした。さらに提案する食感知覚処理方法は、学習に用いていない菓子類の特徴も抽出が可能であることも確認した。これらの成果は、平成27年度において学会での口頭発表並びに論文投稿を行う予定である。 以上のことから、申請書で挙げた2つの項目を実施、評価しており、食感評価に有用な新しいデータを取得できている。以上のことから、「おおむね順調に進展している」の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
食感センサはさらに小型化を実施する。食感センサを取り付けて使用する予定の咀嚼機構を平成25年度に製作したが、平成26年度の研究成果から複雑な咀嚼軌道でデータを取得するよりは単純な上下運動による咀嚼軌道でデータを多く取得することも重要と考えられる。まずは基礎データとなる前者を優先してデータの収集と提案する食感センサの有効性を検証したい。また、平成27年度は発火型ニューラルネットワークを利用して、ヒトの知覚処理に近い食感知覚処理方法の検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に食感センサの基板製作に必要な費用の一部を財団からの助成金により充当したため次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は小型の食感センサの基板製作費を計上しており、見積もりでは計画よりも諸費用が掛かる予定である。次年度使用額は、その費用に充当する。
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