本研究の目的は、食感センサと咀嚼運動機構に食感知覚処理方法を組み合わせた食感計測システムの実現及び食感知覚の定量化である。ヒトは歯根と歯槽骨の間でクッションの役割を担う歯根膜という組織をもち、咀嚼時の歯根膜の伸縮を同膜内にある応答特性の異なる2種類の受容器によって検出し、最終的に脳内において食感として知覚する。この食感知覚の可能な計測システム実現のため、3年間の研究において、食感センサの研究、咀嚼運動機構の研究、知覚処理の研究を並列して推進した。 平成25年度に実施した研究では、歯根膜の柔軟性と受容器の特性を備えた食感センサを提案した。手段としては永久磁石と磁気素子を利用し、歯に相当する接触子の変位と接触子が受ける力を計測できることを確認した。それに加えて、ヒトの咀嚼運動をモーションキャプチャにより計測・解析し、そこで得られた軌道や速度を実現可能な咀嚼運動機構を製作した。 平成26年度においては、食感センサを高感度にするための増幅回路を設計・製作した。食感センサがもつ2つ磁気素子、磁気抵抗素子とインダクタの応答周波数が異なることを示し、その2つを備えることの有効性を検証した。食感知覚処理として、機械学習の1つであるサポートベクタマシンを用いた食感判別方法を提案し、2つの素子を入力として90%以上の精度で判別が可能であることを明らかにした。 平成27年度においては、特に神経回路モデルを用いた食感知覚処理を提案した。食感センサの出力は時系列のデータとなるため、時系列データの処理の可能なリカレントニューラルネットワークを用い、食感の判別の可能なことを明らかにした。最後に3年間の成果のまとめとして、食感評価システムとして食感の計測・評価の可能なシステム構築を行った。
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