研究実績の概要 |
渋柿の一種で、島根県の特産である西条柿は、糖度が高く食感も優れているため、市場での評価が高い品種である。しかし一方では、傷がついたり、軟化したりで規格外果実が約2割も発生しており、その有効活用に対して強い要望がある。そこで、本研究では規格外果実の有効利用をはかるため、未脱渋の渋柿ペーストに牛乳や豆乳などのタンパク質素材を加えて、渋柿タンニン-タンパク質複合体を形成させる渋抜き法を調理に応用することを試みた。 本年度は、柿渋ペーストに豆乳とエバミルクを添加し、その渋柿ペーストの冷蔵、冷凍による脱渋効果と色調や物性などの品質変化を詳細に検討した。具体的には、島根県農業技術センターで収穫された未脱渋の西条柿果実を、フードプロセッサーにかけてペーストにした.このペーストに豆乳とエバミルクをそれぞれ10%,20%,30%,50%の割合で混和し,製造直後(常温)と冷蔵1週間,冷凍1か月,冷凍3か月で保存したものの色調(L*,a*,b*),可溶性タンニン含量,物性を測定した.その結果、豆乳とエバミルクはどちらとも非常に高い脱渋効果が認められたが、両者を比較すると、エバミルクの方が脱渋効果が高かった。また,豆乳を混和した渋柿ペーストは、保存期間が経つにつれて明度が下がったが、エバミルクでは色調の値が安定していた。さらに,エバミルクを混和した渋柿ペーストは、豆乳を混和したペーストと比べて、冷蔵や冷凍によるかたさや付着性などの物性の変化が少なかった。また、これらの結果をもとに、洋菓子への応用を考案し、国際学会にて口頭発表を行った。
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