研究課題/領域番号 |
25350098
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
市川 陽子 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 准教授 (50269495)
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研究分担者 |
下位 香代子 静岡県立大学, 付置研究所, 教授 (10162728)
合田 敏尚 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 教授 (70195923)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | フラボノイド / 抗酸化活性 / ポリフェノール / 高フラボノイド食 |
研究概要 |
ポリフェノールの一種であるフラボノイドは、様々な機能性を有することから日常的な摂取による疾病予防効果が期待されている。しかし、ヒトでの食事由来フラボノイドによる機能性評価に関する報告は少ない。本研究の目的は、食事による機能性成分の摂取のあり方を提案するため、高フラボノイド食の調製に必要なデータベース作成と、短・中期的な高フラボノイド食の継続摂取による疾病リスク低減効果を小規模ヒト介入試験により検証することである。平成25年度は、(1) 食材の調理過程におけるフラボノイド含有量の変化 (2)ヒト試験に用いる高フラボノイド試験食の開発と妥当性の検討を行った。 試料食材を生およびゆで、煮、焼き、炒め調理後、凍結乾燥、酵素加水分解処理し、代表的なフラボノイドアグリコンをHPLCにより測定してフラボノイド含有量の変化傾向を調べた。生に比べてゆで、焼き、炒め調理では有意に減少し、その減少幅には違いがみられた。高フラボノイド試験食は、食事摂取基準に基づき、フラボノイド含有量を高める食材・調理法を選択的に取り入れた複合食とし、9モデル食を作製した。料理単位で前述と同様にフラボノイド含有量を測定した。さらに、Folin-Ciocalteu法による総ポリフェノール量の測定、DPPHによる抗酸化活性の測定を行った。4種類のモデル食のフラボノイド含有量推定値は、先行研究の日本人のフラボノイド推定摂取量の約3倍であり、高フラボノイド試験食として妥当と判断した。また、料理中のフラボノール類は抗酸化活性と正の相関を示したが、イソフラボン類、フラボン類では相関がなかった。フラボノイドは、抗酸化活性に大きく寄与するフラボノール類と、寄与は少ないが、その他の機能性を有するフラボン類、イソフラボン類に分類できること、高フラボノイド食の立案には、異なるフラボノイドを含む食品を組合せて調製すべきであることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度は、食材の調理種類別にフラボノイド量の変化の傾向を検討し、現在までに高フラボノイド食調製のためのデータベース作成に着手した(研究計画1)。また、ヒト試験に用いる高フラボノイド試験食の開発を進め、フラボノイド含有量の実測および抗酸化活性の測定により、試験食としての妥当性を検討した(研究計画2)。以上については研究目的を概ね達成している。 これらに続き、当初の計画では高フラボノイド食摂取後の尿中および血漿フラボノイド濃度の測定(研究計画3)と、高フラボノイド食およびフラボノイド低減食の短期継続摂取後のバイオマーカーの検討(研究計画4)を開始する予定であったが、2つの理由から研究が遅延している。1つ目は、測定機器(HPLC)の不具合が断続的に発生し、数ヶ月間にわたり試料中のフラボノイド量の測定ができなかったことである。2つ目は、被験者の採血に関して、本学の研究倫理委員会が外部審査委員の指摘を受け、従来の方法(医師の管理の下、看護師により学内で採血を行う方法)では研究倫理審査の承認が得られなくなったことである。このことにより、ヒト試験の開始については大きく進行が遅れたと言わざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
現在、測定機器については修理が完了したと同時に、他研究室の協力を受け、よりグレードの高い機器を使用することが可能となった。また、HPLCでは検知できなかったフラボノイド類についても、共同利用機器室のLC/MSを使用することが可能となり、すでにデータを蓄積中である。今年度中に、フラボノイドを含む主たる食材について、フラボノイド含有量の調理過程での変化傾向を調べ、まとめる予定である。 研究倫理審査については、全学的な働きかけにより、本学の研究連携機関となる「医療機関」を整備する準備に入っており、体制が整い次第、再度研究倫理審査を申請、承認を得て、採血を伴うヒト試験が開始できる見込みである。また、採尿に関しては倫理審査の承認が得られているため、今年度は尿中の炎症マーカーを中心に高フラボノイド食の継続摂取による疾病リスク低減効果について検討していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
【現在までの達成度】に記載した通り、当初計画していた高フラボノイド食摂取後のバイオマーカーの検討に際し、本学研究倫理委員会における承認条件が大きく変わったため、採血を伴うヒト試験については当該年度中に開始できなかった。したがって、採血業務者および被験者への謝金、血中バイオマーカー測定に係る費用を次年度に持ち越すこととなった。 医療機関との研究連携体制が全学的に整備されたのち、直ちに研究倫理審査を受けてヒト試験を実施する。次年度使用額は、従来の計画通り被験者への謝金、血中バイオマーカー測定に係る費用に充てる。
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