研究課題/領域番号 |
25350098
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
市川 陽子 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 准教授 (50269495)
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研究分担者 |
下位 香代子 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 教授 (10162728)
合田 敏尚 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 教授 (70195923)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | フラボノイド / 高フラボノイド食 / 尿中フラボノイド濃度 |
研究実績の概要 |
フラボノイドは様々な機能性を有し、疾病予防効果が期待されている。本研究の目的は、食事による機能性成分の摂取のあり方を提案するため、食材別・調理法別のフラボノイド含有量のデータベース作成と、高フラボノイド食の継続摂取による疾病リスク低減効果を小規模ヒト介入試験により検証することである。平成26年度は、(1)尿中フラボノイド濃度の測定方法の確立、(2)高フラボノイド食摂取による尿中フラボノイド濃度の経時変化、(3)血漿中フラボノイド濃度の測定方法の検討を行った。被験者はいずれも静岡県立大学の健康な学生(21-22歳)である。 尿中フラボノイド濃度は、尿を酵素加水分解処理しSep-Pak C18にて抽出後、LC/MSを用いてフラボノイドアグリコンとして測定した。高フラボノイド食摂取による尿中フラボノイド濃度の経時変化は、試験初日にフラボノイド低減食を3食摂取してウォッシュアウトとした後、2日目の朝食に高フラボノイド食を摂取し、昼食と夕食に再びフラボノイド低減食を摂取した。尿サンプルは、2日目の朝食前(0時間)、朝食摂取後から6時間後(0-6時間)、6時間後から12時間後(6-12時間)、12時間後から24時間後(12-24時間)の4区分で蓄尿し収集した。その結果、6-12時間で最もフラボノイド濃度の濃い尿が検出された。これは、Mullen W.ら(2006)、Xu X.ら(1994)が報告しているタマネギ等の単体摂取におけるフラボノイドの尿中排泄時間よりも後ろにシフトしていた。本研究におけるフラボノイドは複合食中の調理物として摂取しており、食品単体の摂取よりも吸収に時間を要したと推察される。 今回の結果より、フラボノイド含有量を高めた食事由来のフラボノイドが生体内で吸収されること、複合食中のフラボノイドは食品単体の場合に比べ、摂取後の吸収が遅れる可能性があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H26年度は、尿中のフラボノイド濃度の測定方法を確立させ、複合食からのフラボノイド摂取時における尿中フラボノイド排泄量について経時的に測定を行い、体内動態を調べた。以上については概ね達成している。 また、平成25年度に学内の研究倫理審査基準の変更によって実施できなかった被験者の採血については、医療機関での実施体制が整い、血液サンプルの収集を始めることができた。現在、血漿フラボノイド濃度の測定方法について、条件を変化させて精度を高めるための検討を行っている。(研究計画3) しかし当初は、フラボノイド含有量が一定以上の食材について、調理法別にフラボノイド含有量および抗酸化活性の変化傾向を検討し、データベース作成を継続していく予定であったが、年度の途中でサンプル調製に用いる機器(真空ポンプ)に不具合が生じ、数ヶ月間にわたりサンプル調製ができなかった。その結果、食材別・調理法別のフラボノイド含有量のデータベース化については計画よりも遅れている。現在は修繕が完了し、再び実験を進めている。(研究計画1) なお、研究計画2(試験食の妥当性の検証)については平成25年度中に達成している。
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今後の研究の推進方策 |
現在、機器の修理は完了し、食材の調理法別のフラボノイド含有量および抗酸化活性の測定について、サンプルの収集を再開したところである。今年度中にこれらの測定とデータの整理を行い、フラボノイド含有量が一定以上の食材における、調理法によるフラボノイド量および抗酸化活性の変化についてデータベース化を行う予定である。 血漿中のフラボノイド濃度については、現在、測定精度を高めるための検討を重ねている。測定方法が確立し次第、高フラボノイド食を用いて血漿中のフラボノイドの濃度変化を追い、体内動態について検証する。その結果をふまえ、ヒト介入試験における採血時間を確定する。その後、被験者を募って介入試験を実施し、高フラボノイド食の継続摂取後のバイオマーカーの検討を行う予定である。なお、被験者(軽度肥満の若年~中年男性)の集団については目星がついている。(研究計画4)
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次年度使用額が生じた理由 |
平成25年度に、学内の研究倫理審査基準の変更に伴い被験者の採血が実施できなかったことにより、ヒト試験の準備、予備試験、本試験の実施が順次遅延している。被験者、採血業務担当者および医療機関への謝金、血中バイオマーカー測定に係る費用は、本研究において最も確保が必要な部分であるため、次年度のヒト試験の開始に向けて計画的に繰り越しを行った。
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次年度使用額の使用計画 |
「今後の研究の推進方法など」に記載したとおり、高フラボノイド食の継続摂取によるバイオマーカーの評価に関するヒト介入試験は、平成27年度に本格的に開始する。次年度使用額は当初の計画通り、被験者、採血業務担当者および医療機関への謝金、血中バイオマーカー測定(キット類の購入)費用に充てる。
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