研究課題/領域番号 |
25350101
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研究機関 | 福岡女子大学 |
研究代表者 |
石川 洋哉 福岡女子大学, 文理学部, 准教授 (00325490)
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研究分担者 |
清水 邦義 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (20346836)
山内 良子 福岡女子大学, 文理学部, 助手 (50638575)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 抗酸化成分 / 相互作用解析 |
研究実績の概要 |
本研究では、生体内抗酸化ネットワークに関わる抗酸化成分間の相互作用の解析とそのメカニズムの解明、さらに実食品への展開を想定した食品の抗酸化機能活用法を提示することを目的とする。26年度は、アセトニトリル系でのDPPH法を用い、疎水的環境下でのα-トコフェロールと各種抗酸化物の相互作用をMedian effect analysisにより解析した。その結果、アセトニトリル系では、水/エタノール系と比較して相乗効果の程度が増大する傾向が確認された。例えば,α-トコフェロールとケルセチンではCI値が0.85~1.05(水/エタノール系)から,0.75~0.86(アセトニトリル系)と低下し,相乗効果の増大が認められた。この結果は,疎水的環境下では水系よりも強い抗酸化物間での相互作用が発現することを示唆するものであった。続いて、生体内での酸化障害の最大の要因である脂質過酸化反応における抗酸化物の相互作用を検証するために、ロダン鉄法(リノール酸過酸化抑制効果)を用い抗酸化物間の相互作用を解析した。その結果、α-トコフェロールとカテキン類・グルタチオンなどの組合せで相乗効果を発現することを確認した。これらの組合せは,DPPH 法においても同程度の相乗効果が確認されており,メカニズムの異なる反応系(水素原子転移反応と一電子転移反応)で同様に相乗効果を発現することが確認された。一方, DPPH法とロダン鉄法で異なる相互作用を示す組合せも確認されており、両反応系で相乗効果の発現メカニスズムが異なる可能性も示唆された。さらに、ロダン鉄法ではグルタチオンと各カテキン類が相乗効果を示すことも明らかにした。以上、本年度の研究では生体内抗酸化ネットワークの主要成分であるα-トコフェロール、グルタチオンを中心に、各種抗酸化物との相乗効果の発現を明らかにし、今後の抗酸化物の利用に関して極めて重要な情報を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度(研究初年度)行ったモデル溶液系での相互作用解析では、得られた結果が親水的環境下でのラジカル消去反応に限定されていたことが課題として残ったが、本年度は疎水的環境下での抗酸化物間の相互作用(相乗、相加、相殺効果)を明らかにすることが出来た。具体的には、2年間の研究において、生体内抗酸化ネットワークの主要成分であるα-トコフェロール、グルタチオンなどを中心に、その作用環境(親水的、疎水的環境)に応じた抗酸化物間での相互作用を明らかにすることが出来た。また、相乗効果を発現した抗酸化物の組合せは期待していた以上ものであり、また相乗効果を発現する抗酸化物の構造要因についても重要な知見が得られている。さらに、今年度は生体内での酸化障害の主要因と考えられる脂質過酸化反応に対する抗酸化物の相乗効果も確認されている。以上の成果から研究はおおむね順調に進展していると考えている。さらに、研究計画となっている擬似細胞系での抗酸化物間での相互作用解析については、本格的な検証次年度となるが、本年度すでに実験系は確立済みであり、相互作用解析が可能な段階まで順調に進行(予備試験済)しており、研究全体の進行に関して特に影響は無いと考えられる。 以上の理由により、研究全体としてはおおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、平成26年度の研究成果を基に、モデル溶液系(特にロダン鉄、ORACなど)での抗酸化物の相互作用解析を継続して進めるとともに、擬似細胞系であるリポソーム系における抗酸化物の相互作用解析を試みる。すなわち、26年度の検討において検証してきたロダン鉄法では、システイン、αリポ酸など生体内抗酸化ネットワークで重要な化合物での検討が残っており、その検証実験を進めるとともに、ORAC法・WST-1法など反応メカニズムの異なる溶液系での効果を詳細に検証していく。これらの検討により、様々な反応モデルにおける抗酸化物間での相互作用が明らかになり、生体内での抗酸化物の相互作用に関する新たな知見が集積されると考えられる。さらに、リポソーム系での検証では、生体内での細胞酸化障害抑制に関わる抗酸化物の相互作用効果を明らかにすることが可能になると考えられる。このリポソームの実験を通じて、抗酸化物のカプセル化に関わる知見も集積されると考えている。以上の一連の相互作用解析を通じて、抗酸化物の相乗効果発現における抗酸化物の活性発現要件を明らかにし、相乗効果の発現メカニズムを検討することにより、抗酸化成分間で生じる相互作用の理論的裏付けを試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究はおおむね順調に進展し、関わる経費も想定されていたものであるが、前年度(研究初年度)の繰越分が一部残った形となって最終年度に繰越予定である。最終年度で予定している疑似細胞系での検証、他の反応系での検証、カプセル化試験などはいずれも試薬が効果であることから、最終年度の経費として使用を予定している。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額となった金額は、全て物品費として使用予定である。具体的には、リポソームを利用した疑似細胞系あるいは細胞系における抗酸化物間での相互作用測定に用いる試薬一式(エタノール等の溶媒、反応試薬)および関連のピペット、サンプルビン、ガラス器具など一式を次年度に購入し、使用する予定である。
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