研究課題/領域番号 |
25350108
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 同志社女子大学 |
研究代表者 |
真部 真里子 同志社女子大学, 生活科学部, 教授 (50329968)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | うま味 / だし / 後鼻腔 / におい / 鰹節 / チキン・ブイヨン / 官能評価 / 塩味 |
研究概要 |
申請者は、これまでに、鰹だしとチキン・ブイヨンのにおいには、塩味増強効果はないもののおいしさ向上効果があることを確認した。そこで、このおいしさ向上効果に、においによる“うま味”増強効果があるのではないかと予測し、それぞれの後鼻腔経由のにおいがうま味強度に及ぼす影響について自作の装置を用いた官能評価によって検討した。 まず、鰹だしのにおいのうま味増強効果を検討した。すなわちT字管の左端を鰹だしの入ったインピンジャーに、下端を蒸留水もしくは0.68%食塩水の入ったカップに連結し、被験者に右端から吸い込んでもらうことで、口腔内に鰹だしのにおいと蒸留水もしくは食塩水を同時に導入した。被験者に、その時のうま味強度を7点評点法で回答してもらった結果、鰹だしのにおいには、うま味増強効果が認められた。特に塩味を伴うとその効果が顕著であった。 次に、チキン・ブイヨンのにおいの効果を検討するために、チキン・ブイヨンと先にうま味増強効果を確認した鰹だし、さらにチキン・ブイヨンの材料から鶏・鶏がらを除いた野菜と香辛料のブイヨンを用いて以下の官能評価を実施した。先述の自作の装置を用いて、各試料の香気成分を口腔内に導入しつつ0.03%グルタミン酸ナトリウム溶液を飲んでもらい、におい無しの場合を基準(0点)として、うま味の強さを7点評点法(±3点)にて比較してもらった。その結果、チキン・ブイヨンのにおいには、うま味増強効果は認められず、むしろ野菜と香辛料のブイヨンに鰹だしに匹敵するうま味増強効果が認められた。 この時のα波発生量を簡易型脳波測定装置にて測定し、好ましさとの相関を検討したが、被験者の好ましさの回答とα波発生量との相関が明確には認められず、今後、装置の操作に慣れてもらうためのトレーニングの強化や、1回の検査で評価してもらう試料数を減らす等の脳波測定方法のさらなる改善が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、脳波測定(α波発生量)による好ましさの客観的評価をめざしているが、平成25年度の実験では、被験者の好ましさの回答とα波発生量との相関が明確には認められなかった。特に大きな問題は、官能評価と同時並行で脳波測定を実施する予定であったが、測定器の性質上、別途測定する必要があることが分かったことである。このことは、被験者の負担を増やすことになる。やむをえず、今回は、アロマが気分に及ぼす影響を検討した既報に基づいて行った。しかし、本研究では被験者が飲み込む行為を行うなど、既報とは状況が異なり、測定方法の適切性に疑問が残った。そのため、平成25年度の結果からは、α波発生量と好ましさの相関の有無を判断することができない。再度、脳波測定における測定のタイミング等を精査する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
まず、脳波測定方法の検討を行う。まずは、自作の装置を用いず、前鼻腔経由でだしのにおいを被験者に付与し、だしのにおいがα波発生量に及ぼす影響を検討する。その後、自作の装置を用いて後鼻腔経由でにおいを付与し、脳波は長時間モニターすることによって、脳波測定方法を調整する。 また、平成25年度の研究結果からうま味増強効果が認められた鰹だしと野菜・香辛料のブイヨンについて、実際の料理においてもその効果があるかの確認を行う。すなわち、平成25年度にも使用した自作の装置を用いて、鰹だしと同じうま味強度となるMSGを用いてすまし汁を調製し、鰹だしのにおいの付与の有無によるうま味強度の相異を検討する。野菜・香辛料のブイヨンについては、まず、パイロットテストにより、本研究に用いるのに適切な料理を選択し、その後、本実験を行う予定である。また、並行して、鰹だし、野菜・香辛料のブイヨンの香気成分についてGC-MS分析を実施し、うま味増強効果を有する香気成分の検索を試みる。 さらに、台湾での官能評価をめざして、研究協力者との打ち合わせを開始する。
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次年度の研究費の使用計画 |
主たる理由は、脳波測定装置の購入を見合わせたことである。平成25年度の研究において、当初、脳波測定装置を4台購入する予定であった。しかし、既存の脳波測定装置による予備実験において、一被験者が官能評価中並行して脳波測定を実施できないこと、官能評価結果と脳波測定結果の相関性が確認できなかったことから、脳波測定方法を精査する必要が生じた。そのため、平成25年度脳波測定装置の購入を見合わせた。 しかし、一方で、AA分析用HPLCのカラムオーブン、既存簡易脳波測定装置の解析用PCを急遽購入する必要が生じたため、脳波測定装置用に計上した予算を一部、こちらに充当した。 その差額によって次年度使用額が生じた。 脳波測定装置は、測定方法が確立次第購入する。ただし、官能評価と同時測定が不可能であることが明らかとなったため、現時点では必要台数が少なくて済むと考えている。そこで、購入台数を予定より減らし一台を購入する予定である。 その他、実験に関わる消耗品費については、GC-MS分析に必要な消耗品を加える以外は、研究計画調書に記載のとおり執行する。 また、平成26年度より、研究協力者との打ち合わせを開始する予定であるため、台湾渡航費としても使用予定。
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