研究実績の概要 |
本年度は、鰹だしのにおいによるうま味の発現に関する官能評価を日本(京都市・同志社女子大学)と台湾(台南市・嘉南薬理大学)にて実施し、生活環境、民族のちがいによる相異を検討した。すなわち、各大学の食物系学科在籍の20歳代の学生を被験者とし、自作の装置(J. Food Sci., 79, S1769-S1775 (2014))を用いて、0.03%グルタミン酸ナトリウム(MSG)溶液と共に、後鼻腔経由で鰹だしのにおいを口腔内に導入し、においが無かった場合と比較し、うま味強度が変化するかを回答してもらった。その結果、鰹だしのにおいを付与することによって、MSG濃度に換算して1.75倍にうま味が増加した。このことから、日本人でも台湾人でも、鰹だしのにおいによってうま味が増強されることが確認できた。 研究代表者は、これまで日本人を被験者として、鰹だしには減塩効果があり、その効果は、うま味以外の呈味物質による塩味増強効果とうま味と鰹だしのにおいによるおいしさ向上効果によることを明らかにし、鰹だしのにおいによるおいしさ向上効果は鰹だしのにおいがうま味を誘発することに起因することを報告している。そこで、台湾人においても、鰹だしによる減塩効果があるかを検討することにした。その結果、0.12%MSGだけでは減塩効果は認められなかったが、MSGのうま味を一部鰹だし(鰹だし2%)に置き換えると(うま味強度0.12%)塩味増強効果とおいしさ向上効果による減塩効果が認められた。 そこで、この被験者が日本食や鰹節にどの程度慣れているかを確認するために質問紙調査を実施したところ、全員が鰹節を知っており、80%以上が少なくとも半年に1回程度日本食を食べ、鰹節を使った料理を食べたことがあった。台湾にて鰹だしによる減塩効果が認められたのは、このような鰹節に対する食経験によると推測された。
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