各種褐藻中のクロロフィルc2の量と調理過程における動態について主に研究を進めた。クロロフィルc2の量については吸光度法と高速液体クロマトグラフ法の両方を用いて測定した。さらに海藻食と抗アレルギー疾患との関連については、聞き取り調査から現代の食生活では漁村において海藻食が多いとは限らないことから、伝統的な食生活を残していると考えられる過去の食生活調査と各種統計による分析を行った。 まず、現在全国的に流通している褐藻類のうち、クロロフィルc2を多く含んでいたのはギバサ(秋田)、ナガモ(新潟)、ジンバソウ(京都)などの名前で昔から各地で食用とされており近年全国的に利用されるようになった「アカモク」、青森の津軽半島沿岸で利用されている「若生コンブ」、主に対馬から四国地域に至る広い地域で利用されている「カジメ」であった。一般的に良く用いられるコンブ、ヒジキ、ワカメの市販乾燥品は含有量が低かった。漁師の方、漁協や海洋センターの協力で集めたサンプルには生(冷凍品)と自家製の乾燥品が存在したが、同じ地域の海藻でも乾燥物はクロロフィルc2の含有量が有意に低かった。これらの乾燥サンプルは天日干ししていることから太陽光の影響も考えられる。しかし人工的に乾燥させていると考えられる市販品板ワカメでも含有量が低かったことなどからクロロフィルc2を有効に摂取するためには乾燥品を避けることが望ましいと考えられた。冷凍保存は含有量に大きく影響しなかった。クロロフィルc2の含有量の多いアカモクで、調理条件下での損失などを検討したところ、ゆでる操作では1~2分加熱ではほとんど損失することなく、10分でも約70%の残存率であった。一方、酸による影響は大きく、5分浸漬で約70%、24時間では約10%の残存率となった。 昔の食生活調査や統計資料からアレルギー疾患と海藻食の関連性は明らかすることができなかった。
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