研究課題/領域番号 |
25350112
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 川崎医療福祉大学 |
研究代表者 |
長野 隆男 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (20304660)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ザクロ / 接触過敏症 / 大豆イソフラボン |
研究概要 |
本研究は、ザクロ果汁からエラジタンニンを主成分とするポリフェノール濃縮物(以下、PPC)を調製し、アレルギー抑制効果の解明と食品への利用を目的として研究を進めている。 平成25年度は、接触性過敏症(CHS)モデル動物実験系を用いたPPCの抗アレルギー作用について検討した。実験の結果、PPC投与群でアレルギーに関与するIgG1の産生抑制効果とCHS抑制効果が観察された。次に、全身の免疫系に関わっている臓器である脾臓から免疫細胞を取り出し、CD4陽性T細胞について解析をおこなった。その結果、PPC投与群で抗炎症性サイトカインであるIL-10産生細胞とTh1細胞であるIFN-gamma産生細胞の増加が示された。PPCには、Th1/Th2バランスのTh1への調整作用とIL-10産生細胞を増加させる作用があり、CHSとIgG1産生を抑制したことが考えられた。 さらに、この実験で使用したMF飼料には大豆イソフラボンが51.2mg(飼料100g中)含まれていた。大豆イソフラボンもポリフェノールの一つであり、抗アレルギー作用や抗炎症作用が報告されていることから、MF飼料にもCHS抑制作用がある可能性を考えた。そこで、MF飼料と大豆を原料にしていないF2PLD1飼料で比較実験をおこなった。その結果、MF飼料にCHS抑制効果があること、アレルギー性炎症部位である耳介組織への好中球の浸潤が抑制されること、が示された。現在、そのメカニズムについて検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度は、接触性過敏症(CHS)モデル動物実験系を用いたPPCの抗アレルギー作用とそのメカニズムの解明を目標とした。その結果、PPCのCHS抑制効果を示すことができ、そのメカニズムにおいても成果をあげるごとができた。ところが、PPCのCHS抑制効果についてのメカニズム解明は不十分であること、飼料中の大豆イソフラボンにもCHS抑制効果があるといった予想外の結果が得られた。従って、研究を進めることはできたが、さらに研究を進めなければならない課題が増えたと強く感じる理由から、自己評価をおこなった。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の検討から、1)PPCのCHS抑制効果のメカニズム解明は不十分であること、2)飼料中の大豆イソフラボン(以下、SI)にもCHS抑制効果がある可能性が示された。 本研究は、まず、エラジタンニンのアレルギー抑制作用とそのメカニズムの解明を目標としている。PPCのCHS抑制効果のメカニズム解明は不十分であると考えられることから、新たに遺伝子発現解析と動物細胞による研究をおこなう必要がある。遺伝子発現解析では、PCRアレイを用いてCHSに関与していると考えられる80程度の遺伝子について発現を調べる。次に、PCRアレイの結果を受けて、リアルタイムPCRとELISAを用いて遺伝子発現とタンパク質発現について詳細に調べる。また、動物細胞による研究では、ヒトでの効果を目標としている理由から、ヒトの皮膚細胞由来であるHaCat細胞株を用いて調べる。PPCは分解されて、エラグ酸や腸内菌叢による代謝物の形で体内に吸収される。そのため、PPCの作用ではなくエラグ酸とウロニチンAを用いて、好中球の遊走に関与するケモカインとと浸潤に関与するICAM-1の遺伝子発現を指標として抑制効果について調べる。 栄養バランスの関係から、食品はいろいろなものを食べることがよいとされる。大豆は、日本人の食生活には欠かせない食品のひとつである。研究の結果から、PPCとSIの相乗効果が示唆された。そのため、CHSモデル動物実験系を用いてSIのCHS抑制効果とPPCとの相乗効果を調べる。 さらに、食品への利用研究を進める。そのため、マウスへの投与量は重要となる。現在おこなっている実験では、0.2%PPCをマウスに自由摂取させている。この0.2%PPC投与は、ヒトで1日あたりザクロジュース16Lに相当し、量的に多い問題がある。そのため、投与量とCHS抑制効果について詳細に調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
計画していた旅費(12万円)と人件費(14万円)を使用しなかったことが理由である。旅費は他の経費で賄えたこと、人件費は実験補助を予定していた外国人研究生の受け入れが遅くなったことによる。 1)物品費として912千円、その内、設備備品として遺伝子発現解析のため卓上マイクロ冷却遠心機(520千円)、データ解析のためのノートパソコン(200千円)。2)旅費として300千円、カナダ/1週間/学会発表のため。3)人件費として、実験補助に200千円。4)その他、国際会議(カナダ)の参加費700千円。
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