研究課題/領域番号 |
25350116
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本大学短期大学部 |
研究代表者 |
太田 尚子 日本大学短期大学部, その他部局等, 教授 (00203795)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 食品タンパク質ゲル / 超音波分光分析 / タンパク質フィルム |
研究概要 |
平成25年度は、卵白リゾチーム、卵白アルブミン、及び牛血清アルブミンなど加熱誘導ゲル形成性の主要食品タンパク質、更に、冷却誘導ゲルとして知られるゼラチンの超音波特性の温度依存性を中心に解析した。超音波減衰(attenuation)を観察するしたところ、前者(加熱誘導性)のタンパク質は、室温から60℃付近(変性開始温度)までは次第にattenuationが低下し、その後、変性ピーク温度(80℃付近)での保持時間にattenuationが著増し、冷却過程で、平衡化することが観察された。これに対し、後者のゼラチン(冷却誘導性)では、加熱過程で次第にattenuationが減少し、引き続く冷却過程でattenuationが増加に転じることが判った。更に、熱安定性の高い卵白オボムコイド共存下では加熱誘導性タンパク質単独の場合に比べ、attenuation増加開始温度が5~10℃程度遅延することに加え、冷却過程でのattenuationの緩やかな増加が継続して認められた。また、オボムコイド混合系では他種タンパク質の存在を反映するようにattenuationの絶対値が単独タンパク質系に比べ大きいことが、beta-ラクトグロブリン、卵白アルブミン共通して観察された。次に、予備実験の段階ではあるが、市販の卵、乳タンパク質である乾燥卵白とアラネート(カゼイン混合物)をそれぞれ用いてフィルム形成を試みた。その結果、形成されたフィルムは成分組成を適度に制御することにより、一般のフィルム用可塑剤として使用されているグリセロールの部分的代替品としてアラネートを使用する事が出来ることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、平成26年度以降の計画として、初年度の基礎研究(観察された超音波特性値)から、そのゲルの内部構造の均質性や硬さなどを評価し、より応用性の高いタンパク質系を選択する。次に、得られたゲルを出発材料としてフィルム材料を調製する。更にそのフィルムの物性(強度、透湿度並びに透気度)と微細構造を下記の機器分析を用いて明らかにすることとしていたが、研究基金の前倒しにより、当初2年度目に購入する予定であったガレー式透気度試験機を前倒しにより既に導入した。これにより、フィルムの物性試験が、既存のレオメーターと並行して使用可能となったため、おおむね順調に研究計画が進展していると判断された。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の大幅な変更はないが、タンパク質二次構造レベルでの解析を推進するため、現有のFT-IR装置で定量性に乏しいα-へリックス量を、波形分離ソフトを新たに導入しより精度よく定量したいと考えている。即ち、これを通して、超音波分光分析に加え、多くの他の研究者が取り組んでいるフーリエ変換赤外分光分析を併せて実施し、両分析により理解できるタンパク質の相転移現象を総合的に判断・考察しする。 次に、試薬レベルでの実験と実用可能な系を用いた実験を上手く繋げるような研究に発展させたいと考えている。その為の基礎的な取り組みとして、フィルムの構造観察を行う。フィルムの構造観察はゲルを試料とするよりもかなり難度が高いと予想されるが、今後フィルム試料の前処理および観察法を種々検討して観察する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初、初年度(平成25年度)配分額は130万円であり、実験材料(タンパク質票品)、旅費、実験補助謝金、電子顕微鏡に関する業務委託がその内訳であった。その後、前述したように過気度試験機を前倒しで購入することになり、予算が190万円となった。結局、旅費を当該研究費から出費せずに渡航したことなどの要因で、残が生じた。 2年度目(平成26年度)これと今年度以降の研究費で、別の装置を導入し、より詳細なタンパク質二次構造解析を行う見込みである。
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