研究実績の概要 |
平成25, 26 及び 27年度に実施した研究に引き続き、最終年度となった28年度は、熱安定性の異なる2種類の食品タンパク質と一般的に使用されている量に比較し少ないポリアルコール系可塑剤(グリセロール)存在下での、フィルム調製溶液の溶液状態からフィルム状態までの一連の状態変化を解析した。その結果、熱凝固性タンパク質(ここでは乾燥卵白、乳ホェー、分離大豆タンパク質)の種類の違いにより、熱非凝固性タンパク質である乳カゼインナトリウムとの混合によるフィルムの物性に違いがあることが判った。更に、タンパク質を分散させる溶媒の種類を水から50%エタノールに置換した際、そのタンパク質の違いが顕著にフィルム物性に現れることが判った。即ち、熱凝固性タンパク質が比較的親水コロイドである場合(ここでは乾燥卵白や乳ホェー)には水を溶媒としたときには乳カゼインナトリウムはフィルムに伸展性を付与したが、エタノールを溶媒に用いた場合には、分子間β-シート量が顕著に減少し、結果的にフィルムはもろくなることが判った。一方、大豆タンパク質の場合は50%エタノールを溶媒にした際にも伸展性のあるフィルムが創出された。 また、フィルム表面の微細構造観察により、カゼインナトリウム添加では無添加の加熱凝固性タンパク質フィルムに比べ、凹凸のある表面構造が観察された。 以上のことから、カゼインナトリウム添加は、加熱凝固性タンパク質分子間のネットワークの隙間に入り込み、緻密なネットワークの構築を適度に緩和する効果があることが示唆された。
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