研究課題/領域番号 |
25350118
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研究機関 | 長岡工業高等専門学校 |
研究代表者 |
田崎 裕二 長岡工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (90390434)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | キノコ / マツタケ / 香気成分 / 桂皮酸メチル / 遺伝子 / 生合成酵素 / フェニルアラニンアンモニアリアーゼ |
研究実績の概要 |
マツタケの香りは収穫後,保存することにより消失する.その原因は,収穫後の香気成分の揮発と生合成酵素の活性低下に伴う香気成分合成量の減少と考えられている.マツタケの香りを特徴づけているのは,主に桂皮酸メチルであることが分かっているが,マツタケの香りの消失に桂皮酸メチルがどこまで寄与しているのかは明らかにされていない. 平成26年度において,保存によるマツタケの香り消失と桂皮酸メチル生合成のメカニズムを解明するため,マツタケ子実体(長野産)の生長過程(ころ,小つぼみ,中つぼみ,開き小,開き大)における桂皮酸メチル生合成酵素Pheアンモニアリアーゼ(PAL)の活性と桂皮酸メチル量の関係を調べた.PAL活性は小つぼみ,開き小,開き大において,高い傾向にあり,桂皮酸メチル含量は開き小と開き大で高かった.これより,PAL活性と桂皮酸メチル量の間に相関関係は見出せなかった.また,同じサンプルを用いて,マツタケの2つのPAL遺伝子(TmPAL1とTmPAL2)の生長過程における発現様式を調べた.TmPAL1の発現量は,開き小で低かったが,その他ではほぼ一定であった.一方,TmPAL2の発現量は,ころから開き小までほぼ一定であったが,開き大で増加した.これらの結果より,TmPAL1とTmPAL2は子実体中で異なる機能を果たしている可能性が見出された.TmPAL1とTmPAL2のcDNAを用いて,大腸菌発現系pETシステムにより活性を有する組換えタンパク質を産出した.現在,タンパク質の誘導と精製の条件を検討している. マツタケ菌糸体を液体培地で静置培養し,最大生長が60日目である生長曲線を作成した.また,45日目にPheを添加し,60日目でのPAL活性と桂皮酸メチル量を測定した.その結果,PAL活性と桂皮酸メチル量は共に増加した.これより,Pheが桂皮酸メチルの材料であると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度の研究実施計画④『PALとCCMTの遺伝子の転写量測定』において,PALの転写量測定に関しては,マツタケ子実体の各部位及び生長過程による転写量の違いを明らかにした.一方で,一定期間保存した子実体及び菌糸体における転写量測定は,サンプル入手に時間を要したため,次年度に行うことに計画を変更した.また,CCMTの転写量測定に関しては,CCMTのcDNAが単離されていないため,未着手のままとなっている. 計画⑤『PALとCCMTの組換えタンパク質の産出と精製』において,既に単離された2つのPAL遺伝子に関しては,PAL活性を有する組換えタンパク質の産出がなされている.組換えタンパク質の誘導条件の設定に予定より時間がかかったため,精製条件の検討を次年度に行うことに計画を変更した.CCMTに関しては,CCMTのcDNAが単離されていないため,未着手のままとなっている.
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今後の研究の推進方策 |
保存によるマツタケの香り消失と桂皮酸メチル生合成のメカニズムを解明するため,平成27年度においては,PAL遺伝子の子実体及び菌糸体における発現様式を明らかにする.また,PALの桂皮酸メチル生合成に関する機能を明らかにするため,各遺伝子の組換えタンパク質の酵素化学的諸性質を調べ,それらの機能を明らかにする.これらの目的を達成するため,以下の④,⑤,⑥の研究の実施を予定している. 計画④『PALとCCMTの遺伝子の転写量測定』においては,保存したマツタケ子実体・菌糸体の各種サンプルよりトータルRNAを抽出した後,PAL遺伝子の転写量をリアルタイムRT-PCR法で測定する. 計画⑤『PALとCCMTの組換えタンパク質の産出と精製』においては,組換えPALタンパク質の精製方法を確立する. 計画⑥『PALとCCMTの組換えタンパク質の酵素化学的性質の解明』においては,精製した組換えPALタンパク質を用いて,基質特異性,生成物,最適pH,阻害剤等を調べる.またこれと同時に,酵素の活性化剤・安定化剤を探索する.
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