研究課題
紅麹菌は動脈硬化のリスク低減を目的とした機能性食品素材の開発に有効な二次代謝産物を産生する食用微生物である。しかし一方で肝腎障害に関わるシトリニンを産生する場合があり、食品への紅麹菌の応用に際しては適切な菌株選択と厳密な培養制御が必要である。そこで申請者は広汎な条件設定にも対応可能な上に調製が容易、かつ得られる培養産物をready to eatで利用可能な固体培地基剤を用いて菌種、菌株や培養条件を精査し、得られる紅麹菌培養物を実験動物に給餌して機能性を評価するプログラムを立案した。本研究分担者は、胆汁酸添加飼料を給与することによって非肥満型脂肪肝を再現するモデル型を確立してきた。本実験系ではコール酸給餌によって脂肪肝が誘発され、同時にアディポネクチン(アテローム性動脈硬化発症の抑制作用や、インスリン感受性の亢進作用、肝臓や筋肉での脂肪燃焼作用が知られている)の血中濃度低下を招くことが明らかとなっている。そこで今年度は、1)AIN-93G(基本食)、2)基本食+胆汁酸、3)基本食のタンパク質を脱脂チーズで置換、4)基本食のタンパク質を紅麹菌チーズで置換の4群(各群7~8匹)を設定し、WKAH/HkmSlc(オス、3週齢)に14日間給餌した後、幾つかの項目について観察した。その結果、3)おいて肝臓へのトリグリセリドとコレステロールの蓄積を抑制する傾向が認められたが、4)ではトリグリセリド蓄積を抑制する傾向のみに止まった。糞中に排出される胆汁酸は、3)、4)の何れにおいても2)よりも有意に少なかった。この原因は回腸末端部や門脈における胆汁酸の再吸収の亢進でも尿を介しての排出促進でもなかったことから、別の分子形態によって排出されている可能性が示唆された。
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