本実験は、共役リノール酸(CLA)摂取による母マウスのリポジストロフィー症が仔に影響するのか確認し、母が摂取したTG型γ-リノレン酸(GLA)が仔のリポジストロフィー症を改善するか否かを検証するために、下記の実験を実施した。 ICR雌マウスを飼育馴化した後、体重が均一になるよう3群に分け、AIN93Gの粉末飼料を産後2週まで自由摂取させた。各群に与えた油脂は ① Control群:大豆油7%、② CLA群:大豆油6%+CLA油1%、③ TG-GLA+CLA群:大豆油4%+TG-GLA2%+CLA油1% である。ICR雄マウスと交配後、生まれた仔マウスは2週齢で屠殺し、肝臓および腎臓周囲脂肪組織を採取した。母マウスも産後2週目で屠殺し、肝臓および腎臓周囲脂肪組織を摘出した。これらの臓器は重量を測定した後、-80℃で冷凍した。 母マウスの体重増加量は群間で差は確認されなかった。CLA群の肝臓重量はControl群より増加する傾向にあり、TG-GLAとの混合摂取でさらに増加する傾向にあった。腎臓周囲脂肪に着目すると、CLA摂取でControl群より減少傾向になったが、TG-GLAの摂取により脂肪重量は回復した。この脂肪重量の結果により、母体においてTG-GLAはリポジストロフィー症状を緩和する可能性が確認できた。 仔雌マウスの体重および肝臓重量はCLA摂取によりControl群より有意に減少し、TG-GLA+CLA群はCLA単独摂取より増加していた。しかしながら、腎臓周囲脂肪はCLA群とTG-GLA+CLA群との間で有意な差はなく、両群ともControl群より有意に減少していた。一方、仔雄マウスの腎臓周囲脂肪はCLA単独摂取によりControl群より有意に減少したが、TG-GLA+CLA摂取群では他の2群と比べて有意差は無かった。これらの結果から、母マウスのCLA摂取は仔のリポジストロフィー発症の可能性があること、また母マウスのTG-GLAの摂取による仔のリポジストロフィー緩和作用は雌雄で異なることが示唆された。
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