研究課題/領域番号 |
25350131
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
赤川 貢 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 講師 (70405356)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 香辛料 / プロテインチロシンホスファターゼ1B / 2型糖尿病 / インスリン抵抗性 / 機能性食品成分 |
研究概要 |
本研究の目的は、インスリンシグナルを活性化する香辛料成分を探索・同定し、その抗糖尿病作用を培養細胞および動物実験レベルで実証することである。また、分子レベルでそのメカニズムを解明することで科学的根拠に基づいた機能性食品の創出を目指している。平成25年度は、糖尿病治療薬の新しいターゲットとして注目されているプロテインチロシンホスファターゼ1B(PTP1B)阻害剤のスクリーニングを実施し、サフランやアブラナ科香辛料抽出物に強い阻害成分が含有されることを明らかにした。また、阻害成分の単離・同定を試み、サフランの主香気成分であるサフラナール、アブラナ科香辛料の辛み成分であるイソチオシアネート類を同定した。さらにマウス由来筋芽細胞株C2C12細胞をインスリンの標的細胞である筋管細胞へと分化させ、phenethyl isothiocyanate (PEITC)、benzyl isothiocyanate (BITC)、phenyl isothiocyanate (PITC) およびallyl isothiocyanate (AITC) を処理することによってインスリン受容体、およびその下流のシグナル分子(IRS-1、およびAkt)がインスリン非依存的にリン酸化(活性化)することをウェスタンブロットによって明らかにした。イソチオシアネート類によるPTP1B阻害機構を検討したところイソチオシアネート類は、求電子剤としてPTP1Bの活性中心であるシステイン残基の反応生チオールに共有結合し、阻害する分子機構が示唆された。現在、より詳細な阻害機構を質量分析等により行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に計画していた実施項目(1)PTP1Bを阻害しインスリンシグナルを活性化する香辛料成分の単離・同定(2)香辛料成分のPTP1B阻害機構の解析をほぼ予定通りに実行できたため。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に同定した香辛料由来のPTP1B阻害剤の作用機構をより詳細に検討するとともに、その抗糖尿病作用を培養細胞レベルで実証することを目標とする。(1)イソチオシアネート類などの香辛料成分によるPTP1B阻害様式の詳細な解析を行うとともに、活性中心のシステイン残基の修飾構造をnano-LC/MS/MSを使用して解析する。また、修飾構造に対する抗体の作製などを検討して細胞内における修飾を明らかにする。(2)同定した香辛料成分を添加した培地中で培養筋管細胞を培養し、グルコース輸送体 (Glut4) の細胞膜への移行をウェスタンブロット、および蛍光免疫染色法により解析する。また、細胞のグルコース取り込み能の増大をグルコースの蛍光誘導体 (2-NBD-Glc) および2-デオキシグルコースを用いて評価する。2-NBD-Glcの細胞内濃度は、蛍光プレートリーダーを使用して、また、2-デオキシグルコースは、酵素法による比色定量によって解析する。さらに、パルミチン酸処理などによってインスリン抵抗性を惹起した培養筋管細胞を使用してPTP1B阻害成分の2型糖尿病改善作用を検証する。
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