研究実績の概要 |
本研究の目的は以下の3点である:①正常心においてDHAは心臓(特に洞房結節)の機能を変化させる事の検証,②心不全心においてDHAは心臓(特に洞房結節)の機能を回復させる事の検証,③低DHA濃度心における心臓の機能障害の検証. 目的①及び②のため,次の動物群を準備した: C(健常+生理食塩水経口投与),D(健常+DHA経口投与),H(右鬱血性心不全(CHF)+生理食塩水経口投与),HD(CHF+DHA経口投与).平成25年度に採取した心室筋細胞のカルシウム輸送タンパク質(Ca2+P)関連mRNA発現を定量した. Ca2+-ATPase (SERCA) 2aの発現は,C,D,HD群と比較して,H群で有意に減少していた(P ≦ 0.05).リアノジン受容体 (RYR) 3の発現は, C及びD群と比較して,H群で有意に増加していた(P ≦ 0.05). Cav1.2の発現は,C及びD群と比較して,H群で有意に減少していた(P ≦ 0.05).心不全における心筋細胞内Ca2+P発現の異常は,細胞内のカルシウム濃度を変化させ,収縮-拡張不全を引き起こす.本実験の結果から,CHFでは心室筋細胞内Ca2+PmRNA発現が異常となり,細胞内カルシウム輸送のリモデリングが引き起こされた事が考えられた.さらに,これらの異常は,DHA摂取により部分的に回復していた.また,CHF誘発3週間後に,心臓を摘出し,内因性心電図を20分間記録した.心電図の解析,すなわちR波-R波間隔(内因性心拍数),P波-R波間隔,及びQ波-T波間隔の読み取りを現在行っている. 目的③のため,平成26年4月に譲渡されたFads2遺伝子ノックアウトマウス (Fads2KO)の安定的な繁殖を確立した. Fads2KO (-/-)及び野生型(+/+)マウスは,DHA添加飼料またはDHA無添加飼料にて飼育い,20週齢時に,体重測定及び心電図記録後,解剖し,心臓(病理用及びmRNA発現定量用)及び血清(血漿中脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)及び生化学的パラメーター測定用)を採取した.充分なサンプル数を確保するために,現在繁殖を継続させている.
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