はじめに:症状誘発閾値を超えず原因食物の摂取をすることが症状誘発閾値を上げ、耐性誘導するかは明らかでない。我々は、乳幼児を対象に少量全卵の継続摂取が安全に症状誘発閾値を上げることが可能か検証した。 対象と方法:2014年10月から2016年8月に当院で実施した3歳未満児の明らかな鶏卵アレルギー患者を対象とし、まず加熱全卵1/32個の食物経口負荷試験(以下負荷試験)を行い、陰性者を本研究の解析対象者とした。対象は無作為に2群(隔日摂取群もしくは完全除去群)に分類した。隔日摂取群は、登録後6ヶ月間、加熱全卵1/32個を1日おきに摂取し、完全除去群は、6ヶ月間完全除去を指示した。両群とも登録6ヶ月後に、加熱全卵1/8個の負荷試験を実施した。主要評価項目は、6ヶ月後の加熱全卵1/8個の負荷試験陽性率とした。副次評価項目は、検査値(総IgE値、抗原特異的IgE値等)の変化、研究期間中の有害事象の発生率とした。 結果:11名の隔日摂取群と8名の完全除去群の患者背景(年齢、検査値、アナフィラキシー既往歴など)に有意差はなかった。登録6ヶ月後の加熱全卵1/8個の負荷試験の結果は、隔日摂取群の陽性率は0%、一方で完全除去群は50%であり、隔日摂取群が有意に低かった(p=0.018)。研究期間中の総IgE値の変化、卵白特異的IgE値の変化は両群間に有意差は見られなかったが、隔日摂取群の登録6ヶ月後のオボムコイド特異的IgE値は完全除去群と比較して有意に減少していた。研究期間中の誘発症状や有害事象は両群ともに報告はなかった。 結語:乳幼児期において、少量の原因食物を、閾値を超えるような増量をしないで摂取し続けることは、安全に耐性を誘導する可能性があり、本手法は今後の食物アレルギーの臨床に大きな変革を与える可能性がある。
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