研究実績の概要 |
近年炎症細胞や好中球などの壊死やアポトーシスで放出された核酸の機能が注目されてきている。本課題において、我々は① 細胞外核酸は直接がん細胞に作用し細胞増殖抑制(特に乳腺癌細胞)を持つ。② dATPのみはマクロファージ様細胞株に作用してIL-8やTHBS1(Thrombospondin 1)など様々な因子の発現誘導する特異性を持つこと。これら二つの経路を介して核酸は抗腫瘍効果を示す可能性を報告した。さらに細胞外核酸、特にdATPによる細胞障害性機序の解明を目的とし、酸化ストレス促進の可能性の解析を試みた。 マクロファージにおける核酸刺激は、Human Monocyte U937細胞株を40U/ml IFNg刺激した細胞を用いた。刺激2日後、0.5mM各dNTP、200ng/ml PMAを添加し、培地上清中のスーパーオキシドをDiogenes Cellular Luminescence Enhancement System (National Diagnostics, USA) を用いて測定した。その結果、③マクロファージ様細胞株において、dATP添加のみスーパーオキシドの発生誘導が確認された。これまでにdATPを含め核酸単体には抗酸化能が報告されているが、一方でdATPのみマクロファージ等に刺激し酸化ストレスを促進することを示した。 壊死した細胞や好中球から放出された核酸等が近傍のマクロファージに作用して酸化ストレスを誘導することで、炎症細胞等に障害性を与える可能性が示唆された。引き続き平成29年度以降の科学研究費課題において研究を続け発展させていく計画である。
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