生活リズム攪乱モデルの一つとして、光のオンオフのない連続暗黒下でラットを飼育している。連続暗黒飼育ラットは生殖器官の発達抑制が惹起されるが、摂取する栄養素によってその抑制程度は変化する。本研究は、連続暗黒飼育による生殖器官の発達抑制を「改善する飼料」および「改善しない飼料」の組成を確定し、その飼料組成がどのようなメカニズムで生殖器官の発達を制御しているかを解明することを目的としている。 低タンパク質食である9%カゼイン食(コントロール飼料(C飼料))に含硫アミノ酸、ビタミンEおよびパントテン酸を添加した最良飼料(G飼料)で飼育することにより、精巣重量はC飼料に比較し増加した。雄性ホルモンであるテストステロンの血清濃度に飼料および連続暗黒飼育の影響はみられなかったが、C飼料は連続暗黒飼育ラットの精巣中コレステロール含量を上昇させた。また、C飼料では連続暗黒飼育により精巣中のアンドロゲンレセプターのmRNA発現量を低下させたが、G飼料では、連続暗黒飼育の影響はみられなかった。さらに、テストステロンをジヒドロテストステロンに変換する酵素、5αリダクターゼのmRNA発現量は、C飼料を摂取した連続暗黒飼育ラットで低値を示したが、G飼料では連続暗黒飼育の影響はみられなかった。 以上のことより、連続暗黒飼育による精巣の発達抑制はアンドロゲンレセプターの低下、ジヒドロテストステロン合成の低下が関与していること、含硫アミノ酸、ビタミンEおよびパントテン酸は、これらの低下を抑制し、精巣の発達抑制を改善する可能性が示唆された。
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