研究課題/領域番号 |
25350158
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 同志社女子大学 |
研究代表者 |
伊藤 節子 同志社女子大学, 生活科学部, 教授 (50144358)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 食物アレルギー / 低アレルゲン化 / 卵 / 牛乳 / 小麦粉 / アクリルアミド |
研究概要 |
卵の低アレルゲン化には加熱が有効であるが、卵白のコンポーネントタンパク質である卵白アルブミン(以下OVA)とオボムコイド(以下OM)では抗原性の低下の程度とパターンが異なる。OVA特異的IgE抗体のみ陽性である卵アレルギー児では、固ゆで卵のように卵白が凝固する調理法が最も有効な低アレルゲン化の方法である。しかし、3分の2の卵アレルギー児はOM 特異的IgE抗体も陽性でありOMの低アレルゲン化も同時に行う必要がある。小麦粉や米粉を用いた菓子類ではOMが不溶化する一方でOVAは凝固が妨げられて溶出しやすくなり、結果的にはOVAとOMの「食べる」側からみた抗原性が同程度低下することになる。この現象は食品として鶏卵を摂取する場合には極めて重要なことであり、卵アレルギー児の食事指導への応用につながる。一方、小麦粉を加熱調理するとメイラード反応により有害物質であるアクリルアミドが産生されることが知られている。そこで安全性の確認のために卵の低アレルゲン化のために小麦粉を用いた場合におけるアクリルアミドの産生について検討した。その結果、小麦粉と一緒に加熱調理すると卵単独で調理する場合に比較してアクリルアミドが多く産生された。アクリルアミドの産生は、副材料として用いる粉類としては、①小麦粉>米粉、調理条件としては、②調理温度が高いほど、③加熱時間が長いほど多くなり、調理法としては、④オーブン加熱>蒸し調理であることが明らかとなった。 牛乳中のコンポーネントタンパク質であるβ‐ラクトグロブリンの低アレルゲン化には加熱と小麦粉による不溶化が有効であるが、カゼインに対してはいずれの方法も無効であった。そこで発酵によるカゼインの低アレルゲン化について検討した。その結果、発酵乳として市販されている食品中のカゼインの抗原性は原材料としてのカゼインの約50%にまで低下していることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
検討は当初の計画通りに進んでおり、まだ結果を示せない部分についても研究計画通りに見当が進んでいる
|
今後の研究の推進方策 |
26年度以降は、卵、牛乳、小麦の加熱調理や副材料による低アレルゲン化とアクリルアミドの産生についてさらに検討し、安全面の確保と低アレルゲン化をともに満たす調理法の検討を行う。加熱調理による低アレルゲン化があまり期待できないコンポーネントタンパク質については発酵や消化、果物の果汁を用いた低アレルゲン化について検討を進め、小麦粉を用いる場合にはアクリルアミドの産生についても検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
今年度は試料作りと基礎検討を主として行ったが、次年度はその試料の抗原性やアクリルアミドの産生をキットのロットをそろえて行う必要があるため。 アクリルアミドやアレルギー物質の測定キットの購入を行う。
|