研究課題/領域番号 |
25350162
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神戸女子大学 |
研究代表者 |
田中 紀子 神戸女子大学, 家政学部, 教授 (90122324)
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研究分担者 |
奥田 豊子 帝塚山学院大学, 人間科学部, 教授 (90047308)
篠原 久枝 宮崎大学, 教育文化学部, 准教授 (40178885)
浅野 恭代 畿央大学, 健康科学部, 教授 (40098546)
平野 直美 神戸女子短期大学, 食物栄養学科, 准教授 (90218800)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 季節変化 / 体組成 / エネルギー摂取量 / エネルギー代謝 / 運動量 / 心身の状態 / 食生活 / 生活習慣 |
研究概要 |
エネルギー代謝(消費)や体組成,食物摂取量の季節変化および食生活・生活習慣,心身の状態との関連により生じる変動を定量化するため予備調査および本調査を実施し以下の結果が得られた。 1.エネルギー(E)代謝,体組成,食物摂取量の季節変化について(予備調査解析結果) 若年女子運動選手を対象とした予備調査では,安静時代謝量(REE)は冬季に高く,夏季に低くなるREEの季節変化が見られた。また,簡易体組成計により体脂肪率は秋季・冬季に高く,夏季に低い傾向があり,この体組成の変化は寒冷気候への適応として体脂肪を増やして防熱に働いていると推察された。食物摂取量(kcal)と気温との関係では,寒冷環境下では食物摂取量が多く,暑熱環境下では少ないことは古くから知られている(Science, 105, 378-9,1947)。選手の食事調査からエネルギー摂取およびタンパク質摂取は夏季に低く冬季に高くなり,食物摂取について有意な季節変化が見られた。 2.E代謝と体組成・食物摂取の季節変化と食生活・生活習慣との関連 対象者を神戸,大阪,奈良地域の女子大学生(非運動)約70人に拡大して,冬・春・夏・秋の各季節による体組成やREEの変化および運動量や食生活,心身の状態との関連について調べる本調査を2013年12月から開始した。特に神戸地区では高精度の体組成計Inbodyを新規購入して季節変化を詳細に調べた。その結果,体重は変化しなかったが,冬季から春季になると体脂肪率は低下傾向を示し,気候馴化による体組成の変化が示唆された。筋肉では上肢筋量には変化がなかったが,下肢筋量は春季に有意に(p<0.01) に増加した。一方,REEは冬季では平均して約1250kcalであり,春季には有意差はないものの低下傾向が見られた。E代謝や体組成の季節変化と生活・食生活習慣との関連,また心身の状態との関連については解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では異なる地域の被験者に対してエネルギ-代謝(消費),食物摂取,および体組成の季節変動を調べるために春・夏・秋・冬の各期について調査・測定を実施し,背景にある食生活・生活習慣との関連を見ることを目的としている。現在までの達成度を自己点検したところ,近畿地区の神戸・大阪・奈良の異なる地域の被験者として約70人のリクルートを行うことができた。また,季節調査では冬季・春季の調査・測定は行ったが,今年度,夏季,秋季を実施し調査を完了する必要がある。したがって,調査・測定自体は,ほぼ順調に遂行されているといえるが,夏季・秋季の調査がこれからであること,データ解析にあたり,食物摂取からの栄養計算,運動量,食生活・生活習慣アンケート等分析すべきデータが膨大であるため,解析に時間がかかっている現状があるため,やや遅れているとした。遅れている詳細な理由を(1)~(3)に,また,今後の予定を (4)・(5)に記した。 (1)季節変化を調べる調査であるため長期にわたり観察が可能な被験者をリクルートするのに時間を要した。(2)研究目的を遂行するために,体組成の季節変化のデータを得るために,高精度の体組成計が必要であった。当初予定した機種を変更してInbody 720を選定するのに時間を要した。(3)長期に亘る調査研究で使用するため,食生活・生活習慣の質問紙項目の作成は精査し慎重に行った。こうした理由で開始時期はやや遅れ冬季からとなった。(4)夏・秋について同様の調査・測定を実施する。(5)冬・春・夏・秋の各期の食事調査から得た摂取食物の熱量,栄養計算。身に着けさせた活動量計からの日常的運動量の計算。基礎体温の平均値,睡眠時間・起床時間・就寝時間の各期の平均値等のデータのまとめ・解析。
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今後の研究の推進方策 |
今後は調査地近畿の残りの季節の調査を実施する。さらに調査地を九州(宮崎)へ広げ,エネルギー代謝・食物摂取量の季節変動の定量化,および背景となる食生活・生活習慣との関連を調べて,地域差について解析を進める。また,調査では各地のエネルギー代謝の季節変化を調べる簡易な方法を検討して基礎体温の変化を見ることにした。体温の微妙な季節変化について調べるために,被験者(女子学生)の基礎体温について,性周期が明白でなかったり,低温期(卵胞期)と高温期(黄体期)の差が小さかったり,正常な性周期を持つものが50%であることがわかり,これらと食生活・生活習慣との関連を調べることも課題となっている。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は季節変化を調べるので通年にわたり調査・測定を行う。被験者は,ほぼ1年にわたる調査・測定の協力者であり,調査等が完了する秋季に謝金を支払うため。またその間の調査・測定で使用する(エネルギー代謝測定時の使い捨てマウスピースなど)消耗品の支払いもある。 本調査は平成25年12月から開始したので,引き続き平成26年4月,7月,10月の各月で実施する予定である。したがって今後,調査にかかる消耗品および被験者への謝金がある。さらに調査地域は近畿のみならず九州(宮崎)でも各季節の調査を実施予定であり,同様の謝金や消耗品費等の支払いが発生する。
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