研究課題
エネルギー代謝(消費)や食物摂取の季節変化および食生活・生活習慣,心身の状態との関連により生じる変動を定量化するために調査を実施した。女子大学生28人(20-23歳)を対象として,2014年12月~2015年11月[平均気温(℃):冬(6.2),春(14.6),夏(27.3),秋(19.9)]に調査・測定を行った。ホルモンの影響を避けるため基礎体温の低温期に調査を行った。体重,体組成はInBody720を用いて,運動量はライフコーダ(GS),安静時代謝量(RMR)はメタボリックアナライザー(MedGem+)を用いて測定した。食事調査は3日間の秤量記録法で行い,エクセル栄養君Ver.6.0を用いてエネルギー(E)・栄養素摂取量を計算した。統計処理にはSPSS Ver.21を用い,有意水準は5%未満とした。調査の結果,食物摂取量は冬に最も多く,E・栄養素の摂取量は多かった。夏になるとE摂取は減少し,冬に比べて有意に26%減少した。一方,RMRは冬に最も高いが,その後減少し,夏になると有意に20%減少した。したがって,食物摂取とRMRは気温が上昇すると減少し,低下すると増加する季節変化があることが示唆された。歩数と運動量は冬と夏は低いが,春になると有意に増加して身体活動は活発となり,下肢筋量は有意に増加した。体重は夏に1%の減少傾向があった。体脂肪量は冬に最も多く,夏には有意に4 %減少したが,除脂肪量の減少は小さかった。体組成から夏の体重減少は主に体脂肪量の減少によるものであり,部位では上腕と体幹部の減少が大きかった。これらの結果から,日本においても,食物摂取やエネルギー代謝,体組成の季節変化が示唆され,これらの変化は外環境への生理的適応であると考えられた。本研究の結果は栄養指導の現場において季節変化を考慮した栄養教育・指導方法を構築するための基礎資料として意義あるものである。
2: おおむね順調に進展している
本研究は,若年女性について,四季を通してエネルギー代謝,運動量,体組成等の測定を行い,食物摂取調査,質問紙調査を行う研究であり,正確な測定値を得るための被験者を集める必要があった。本研究に参加していただいた多くの被験者が研究の趣旨を理解し測定に協力していただいたお蔭で近畿地区では調査の方はほぼ完了しており,達成度は80 %であるといえよう。測定・調査に際してはホルモンの影響を避けるために基礎体温の低温期の期間内に測定を行うこととしたが,実際に性周期に合わせて被験者が実験室に来室して測定することができた。また,エネルギー代謝測定時には,代謝に影響を及ぼさないように食事時間や飲料水の制限等の詳細な取り決めがあり,そうした煩雑な条件下で測定に応じてもらい,また,春夏秋冬の各期に亘って実施できたことで長期に亘る貴重なデータをとることができた。調査およびデータ入力,そして今回の調査結果の分析は,大体ではあるが終了することができた。
今後の予定として,調査測定の追加および解析がある。1.調査測定の追加として,エネルギー代謝測定を行う被験者を追加する。同時に,別のグループとして,一般人よりもエネルギー代謝や食物摂取の変化がより強く出現すると思われる運動者の調査測定を実施する。さらに,年間を通して気温変化の差が小さい九州南部の地区の調査を行いたい。2.春夏秋冬の調査測定を通してエネルギー代謝,食物摂取,体組成の季節変化を捉えることができたが,今後はこれらのデータと食生活・生活習慣との関連についての解析を実施する。
エネルギー代謝測定実験において,時間の都合で被験者全員の測定ができず,予定人数を完了することができなかったため。また,他の地区の調査についても被験者数が予定人数に達しなかったことによる。
エネルギー代謝測定では被験者を追加して測定する。また,一般人よりも季節変化が明確に現れる運動選手の季節変化についての調査,および九州南部地域の被験者についてのエネルギー代謝測定,食物摂取,運動量の季節変化,および体組成変化を春夏秋冬の四季ににわたり実施する。測定,調査に係る消耗品費,謝金等が発生する。
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日本スポーツ栄養研究誌
巻: 8 ページ: 19-29
日本食育学会誌,
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小児保健研究
巻: 73 ページ: 300-307
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