研究課題/領域番号 |
25350164
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研究機関 | 神戸女子大学 |
研究代表者 |
狩野 百合子 神戸女子大学, 家政学部, 教授 (40203682)
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研究分担者 |
河田 照雄 京都大学, 農学研究科, 教授 (10177701)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | オレウロペイン / オレウロペインアグリコン / エキストラバージンオリーブ油 / ポリフェノール / UCP1 / ノルアドレナリン / TRPA1 / TRPV1 |
研究実績の概要 |
【目的】エキストラバージンオリーブ油に含まれる主要なポリフェノールのオレウロペインアグリコン(OA)は、高脂肪食摂取ラットにおいてノルアドレナリン分泌を促進し、肩甲骨褐色脂肪組織UCP1発現量を増加させ、体熱産生を亢進させることをこれまで報告してきた。本研究では、OAの体熱産生亢進に関するメカニズムを明らかにするために、in situ及びin vitro実験系を用いて調べることにした。 【方法】In situ:SD系7週齢雄ラットをウレタン麻酔下で、Vehicle (0.9 % NaCl solution containing 10 % ethanol and 10 %Tween 80)を対照にして、TRPA1あるいはTRPV1ブロッカー存在下で、大腿静脈よりOA(3.8 mg)を投与した。5分後、ラット腹部大動脈より採血を行い、血漿を分離し、カテコラミン分泌量をHPLC法で測定した。In vitro:ラットあるいはヒトのTRPA1あるいはTRPV1を発現させたHEK293cell を用いて、OA添加によるCa2+濃度をFlexStation蛍光計で測定した。 【結果】In situ:OAはノルアドレナリン分泌を有意に上昇させたが、TRPA1あるいはTRPV1ブロッカー存在下ではその上昇は抑えられた。In vitro:OAはTRPA1あるいはTRPV1を発現させたHEK293cell のCa2+濃度を濃度依存的に上昇させた。このOAによるCa2+濃度上昇はアンタゴニスト存在下で抑えられることが確認された。また、OAはTRPV1活性において生姜の辛味成分であるジンゲロンとほぼ等しいこと、TRPA1活性はTRPV1活性より約10倍高いことも分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エキストラバージンオリーブ油に含まれる主要なポリフェノールのオレウロペインアグリコンは、TRPA1およびTRPV1を活性化することにより、ノルアドレナリン分泌を促進させることが示された。オレウロペインアグリコンによる褐色脂肪組織のUCP1発現を促進して体熱産生を促進することで、内臓脂肪を減少させる、脂質代謝特に体熱産生促進のメカニズムを明らかにすることができたということになり、これは、当初の計画通りである。
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今後の研究の推進方策 |
本研究においても、オレウロペインアグリコンがTRPA1及びTRPV1を活性化し、カテコラミン特にノルアドレナリン分泌を促進させることを見出したことで、褐色脂肪組織UCP1発現量を増加させるという体熱産生促進のメカニズムが明らかになった。近年、白色脂肪組織においてもUCP1発現が起こり、また、カテコラミン特にノルアドレナリン分泌の促進により白色脂肪組織のUCP1亢進することが報告されている。そこで、今後は褐色脂肪組織だけでなく白色脂肪組織(鼠径部脂肪組織、皮下脂肪組織)についてもUCP1発現が起こるかについて、さらに検討を行うことにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまで測定していた褐色脂肪組織におけるUCP1発現量に加え、白色脂肪組織におけるUCP1発現量についても測定をする必要が出てきたため、次年度にUCP1測定のための試薬類を購入する必要があったため、次年度に費用を使用することになった。
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次年度使用額の使用計画 |
上記にも示したように、新たに白色脂肪組織におけるUCP1発現量の測定という必要性が出てきたため、平成28年度未使用額と今年度配分額を併せた金額で、白色脂肪組織のUCP1測定用の試薬類を購入することで、当該助成金を次年度使用する。
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