研究課題/領域番号 |
25350165
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 畿央大学 |
研究代表者 |
山本 隆 畿央大学, 健康科学部, 教授 (60028793)
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研究分担者 |
上地 加容子 畿央大学, 健康科学部, 准教授 (50390208)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 離乳期 / フレーバー / 嗜好学習 / 嫌悪学習 / 幼若ラット |
研究概要 |
幼児は種々の食物を、離乳食やその後の幼児食として与えられ、その食経験を通じて食物の属性としての味、香り、テクスチャーなどを記憶して成長していく。幼児期の食経験は成長後の食嗜好の形成に重要であるとされるが、それを証明する科学的な研究は乏しい。本研究は、離乳直後のラットを対象とし、食物の感覚情報(主として味覚と嗅覚であり総称してフレーバーという)と摂取に伴う快感・不快感との連合学習が可能か否か、可能なら成長後もその学習結果を記憶しているのかどうか、どのような脳のしくみが背後に存在するのか等を明らかにすることを目的とする。 1) 離乳直後(3週齢)のWistar系雄ラットを用い、閾値付近から高濃度に至る5段階の濃度の、甘味溶液(ショ糖、果糖、ブドウ糖、乳糖、サッカリンなどの水溶液)、うま味溶液(グルタミン酸、イノシン酸、その混合物の水溶液)、油脂(コーンオイルなどの中性脂肪、リノレイン酸などの脂肪酸、これらはキサンタンガム溶液にて調整する)のそれぞれと水(蒸留水)との間で、2ビン選択実験を行い、その摂取量から嗜好度を求めた。同様のことを成熟ラットについても行い、結果を比較し、幼若ラットの特性を検討したところ、本質的には同様であったが、高濃度になるにつれ、幼若ラットは嫌悪を示す傾向にあった。 2) 香りの嗜好性についても、本研究で使用するチェリー、グレープのエッセンス(香料会社から提供を受けた)につき、それを微量(10μl/100ml)水に加えて、香り付きの水として2ビン法で与え、どちらの香りを好むかを調べた。なお、次年度行うフレーバー嗜好学習では、これら両方の香りに嗜好性がないことが条件となるのであるが、差がないことが確認できたので、嗜好学習に使用可能であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は予定通り進んでいるが、当初の試験項目が多く設定していたので、時間の関係でその80%位しか完了することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
1) 3週齢ラットについて、フレーバー学習課題による実験を行う。この方法は、すでに成熟ラットを用いて確立されているものである(Gilbert et al. 2003; Renteria et al. 2008)。 先ず1日15分間、6日連続の学習獲得操作を行う。半数のラットに、奇数日にはグレープの香りづけをした水(CS-)を与え、残り半分のラットにはグレープの香りづけをした甘味溶液(CS+)を与える。偶数日には、最初の半分のラットにはチェリーの香りづけをした甘味溶液(CS+)を、残りのラットにはチェリーの香りづけをした水(CS-)を与える。このように、学習獲得時には6日間交互にCS+とCS-を提示する。その後の4日間をテスト期間とし、グレープの香りの水とチェリーの香りの水を2ビン法で与え、摂取量を測定する。甘味溶液以外に、前年度に行った嗜好テストの結果から味溶液の種類と濃度を選ぶ。(CSはconditioned stimulus, 条件刺激) 2) 味刺激の種類、濃度も変えて連合させる。幼若ラットが、好ましい香りと連動した味を好きになるのか、といった上記とは逆の嗜好行動も行い、味と香りの両方向性の学習が可能か否かを明確にする。これらの作業はかなり時間を要するため、2年間かけてじっくり行う予定である。 3) 好ましい味と連合した香りを好み、まずい味と連合した香りを嫌うという学習の成立を確認した後、離乳直後の幼若ラットを無処置で20週齢(あるいはそれ以上)まで成長させ、学習獲得状況を再テストにより調べ、学習効果が保持されているかどうかを調べる。 4) 3週齢ラットの学習獲得時に麻酔下にて脳を摘出する。組織切片を作成後、ARKやFOSなどの細胞活動マーカーを免疫組織化学的に検出することにより、脳の活動部位を調べ、学習と記憶の部位を特定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
3万円弱次年度使用額が生じた。今年度必要とした予定にほぼ合致しているものと考える。 次年度に必要な消耗品費の一部として使用予定である。
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