研究課題/領域番号 |
25350166
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
小山 進 福岡大学, 薬学部, 准教授 (60461505)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | レプチン / 食報酬 / ドパミン受容体 / 腹側被蓋野 / 電気生理学 |
研究概要 |
[研究成果の具体的内容] マウスの脳スライス標本に細胞外記録法を用いて、摂食関連因子であるレプチンが脳内食報酬中枢である中脳腹側被蓋野(ventral tegmental area: VTA)ドパミン神経に及ぼす機能変化を電気生理学的に検討した。レプチンのVTAドパミン神経に対する効果として、以下の3点を明らかにした。(1)レプチンは、投与初期の一過性興奮に続き持続性抑制の2相反応を示した。レプチンによる初期一過性興奮はシナプス前反応によるもので、グルタミン酸作動性興奮性シナプス伝達の関与が示唆された。レプチンによる持続性抑制はシナプス後反応による直接的なもので、K+チャネルが関与していた。(2)電気生理学的かつ薬理学的に同定したVTAドパミン神経は、更に、レプチン応答性神経(75%)とレプチン非応答性神経(25%)に分類された。レプチン応答性神経とレプチン非応答性神経の間には、ドパミンD2受容体作動薬に対する感受性や活動電位 (action potential:AP)電流の発生頻度やAP電流幅などの電気生理学的特性に違いがみられた。(3)高脂肪食負荷肥満マウスのVTAドパミン神経は、非肥満マウスのものに比べて、レプチンによる抑制効果の減弱やレプチン非応答性神経の割合が増加していた。 [研究成果の意義と重要性] 本研究は、VTAドパミン神経に対するレプチンによるシナプス前・シナプス後2相性変化を世界で初めて明らかにした。また、その細胞内機序を薬理学的に同定することに成功した。さらに、肥満マウスVTAドパミン神経のレプチン応答性に関して、「レプチン-ドパミン相互作用」という概念を導入し、食行動異常の是正を柱にした肥満治療薬開発に関して基礎的知見が得られるのではないかと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に実施する予定であった青年期肥満に関する臨床研究に関しては、大学内機関の組織編成のために実施できなかった。しかし、マウスを使用した基礎的研究は、摂食関連因子候補中のレプチンに関して当初の計画を上回る成果を上げることが出来た。この成果に関しては、平成26年度の国内・国際学会で演題発表予定である。 また、本研究課題の基礎に相当する肥満マウスのVTAド神経機能変化に関する知見は、2本の英文科学雑誌に掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
「レプチン-ドパミン相互作用」という概念を導入し、食行動異常の是正を柱にした肥満治療薬開発に関する基礎的知見を得る。そのために、以下の3つの課題を達成する。 課題1:易肥満誘発マウスと肥満抵抗性マウスを作製し、両マウス間でVTAドパミン神経のレプチン反応性を比較する 課題2:易肥満誘発マウスのVTAドパミン神経で認められたレプチンによる抑制効果の減弱が、ドパミンD1受容体からのどのような細胞内シグナルにより回復するのかを薬理学的に明らかにする。 課題3:易肥満誘発マウスの過食行動が、ドパミンD1受容体作動薬の前投与で抑制されるか否かを行動学的に検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度予算は95%以上計画通り使用したが、年度末までに使用額を0円に調整出来ず次年度繰越とした。 物品費の一部として使用する。
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