[研究成果の具体的内容] 高脂肪食負荷肥満マウスの脳スライス標本に細胞外記録法を用いて、脳内食報酬系中枢である腹側被蓋野(ventral tegmental area: VTA)ドパミン神経における「レプチン-ドパミン相互作用」を調べた。非肥満マウスと比較して肥満マウスでは、このレプチン-ドパミン相互作用が減弱していた;(1)レプチン応答性VTAドパミン神経は、全VTAドパミン神経の65%を占め、この割合は肥満マウスと非肥満マウスの間で差がなかった。(2)肥満マウスと非肥満マウス両群において、レプチン応答性VTAドパミン神経にレプチン処理を行うと、D2受容体を介したドパミン自己抑制効果の減弱がみられた。(3)このレプチンによるドパミン自己抑制減弱効果持続時間は、非肥満マウスと比較して肥満マウスにおいて有意に短縮していた。 [研究成果の意義と重要性] 本研究から、神経伝達物質ドパミンと末梢性アディポカインのレプチンが食報酬中枢であるVTAで相互作用を及ぼし、この相互作用は肥満で減弱することが分かった。本研究結果は、「末梢-中枢連関」の視点から肥満における食報酬系機能異常を明らかにし、今後の新規肥満治療薬開発に基礎的知見を提供できると考えられる。
|